働き方改革に思う

  ゴールデンウイーク(GW)が終わりました。今年は9連休になった人も多いとか。1年で一番爽やかな季節にまとまった休みが取れて、現役世代にはありがたい期間だったのだと思います。毎週GWの私には、どこに行っても混み合っているのであまりうれしくはなく、もっぱら家の狭い庭で畑作業をしていました。
  近年は、祝日増や最近始まり官公庁や一部の大企業を中心に実施されているプレミアムフライデーにも見るように、日本人はもっと休もうという流れが強まっています。いわゆる働き方改革の一環として、政府主導で、残業時間の規制も含め、長時間労働の是正策があれこれ進められています。
  長時間労働による過労自殺者が出たり、ワークライフバランスが取れずに疲労困憊した毎日を送ったり、疲労困憊して働くために能率が悪く、仕事上の良いアイデアも浮かばずに低い労働生産性となったり等々の問題を見ると、我が国にとって長時間労働の是正は喫緊の課題であることは間違いありません。
  しかしながら、天然資源に乏しく、国民の勤勉さを最大の武器に高度経済成長を果たしてきた日本が、いま少子高齢化の加速や人口の減少といった課題に直面している中で、あまり働かなくなってもよいのかどうか、やや心配な気もします。
  一人当たりの労働時間を短縮しながら全体として我が国の経済成長力を維持していくには、働く人を増やすことと併せ、先進7カ国で最も低いとされる我が国の労働生産性を高めることが不可欠とも言われているのですが、この労働生産性の議論についてもやや心配な面があります。
  以上二つの懸念のまず最初の長時間労働の是正に関してですが、何がやや気になるかというと、個人の私的な時間の大切さをいうあまり、働くことの意義や大切さについて顧みられず、労働時間が否定的に捉えられがちとなっているところです。人はみんな働くことによって社会参加をし、社会において役割を果たしているわけで、自分の仕事そのものが面白くてつい時間を忘れて働くという人も多いと思います。
  このような意味で、今後は女性や高齢者、障害者にももっと働いてもらうということについては、私は大賛成です。子育て中の女性や、身体が弱ってきている高齢者、ハンディのある障害者が働くことについては、働きやすい社会環境を整備していくことは先決ですが、労働の前向きの意義をしっかりととらえて、働ける人には働いてもらうという社会になっていく必要があると思います。
  次いで、労働生産性に関する議論で気になることについて。労働生産性というのは労働1単位(1人当たり又は1時間当たり)で生み出す付加価値のことで、国内総生産(GDP)を労働者の総数で割って算出するそうですが、日本がOECD各国や先進7カ国の間でも低いのは、日本のGDPの7割を占めるサービス業では人手に頼る業務が多く、かつ、これらの大半が労働効率を高めにくい中小零細企業で担われていることが主因のようです。
  サービス業の中の卸売・小売業や飲食・宿泊業では、IT導入の遅れや過剰サービスの一方でその対価が低いことなどが指摘されています。介護や福祉の現場も、生産性の低い小規模な社会福祉法人が担っていることの問題が指摘されています。
  このため、ITや人工知能(AI)など、労働効率を高める技術革新を進めていく必要性や、非効率な産業や企業から効率のよいそれらへの移行、転換、また人材面でも流動性を高めてそれを可能とするよう、日本の伝統的な終身雇用制や年功序列賃金の見直しの必要性も言われています。
  要するに日本の産業構造や伝統的人事管理制度の変革が求められているわけで、確かに必要と思われるものがある一方、日本人のこれまでの生き方そのものに影響することも多く、複雑です。
  労働生産性を向上させるために、日本人の「横並び意識」が会議などでの意見が出にくかったり、独創的な意見やアイデアが出にくい原因になっているのでその変革をしようというのはまだ我慢できますが、最初に結論が分かる英語などと違って、日本語は最後まで聞かないと結論が分かりにくく効率が悪いので使わないようにしよう的な意見まであるのには、極めて不安な気持ちになります。
  グローバリズムの名のもとに新自由主義経済が進められ、格差社会が拡大したことに対する批判は多いのですが、労働生産性の向上のためにはやはりその潮流に乗らなければならないのか、戸惑いを覚えます。

(5月2日・鳴沢村にて。富士桜とミツバツツジ
  GWに娘一家は香港、息子一家は房総へと家族旅行をして楽しんだようです。大人は英気を養い、子どもは広い視野を養って、それぞれまた日常の忙しさに戻っていきました。
  一人、おじいちゃんが、子ども世代や孫世代の日本を気にして雑感をしたためた次第です。