多忙な3歳

 娘が電話をかけてくるときはたいてい、最後にYちゃんも電話口に出てきます。先日の電話に出たYちゃんについての妻の報告。妻が、「Yちゃんに会いたいから、おばあちゃんちにまた遊びに来てね」と言ったら、「Yちゃんはプールもあるしぃ、くもんもあるしぃ、ようちえんもあるからいそがしくていけないんだぁ。だけどまたよこはまいくからね」と答えたそうです。たしかこれに加え、リトミックの教室にも通っているはずで、3歳児にしては大変多忙です。
  水泳もリトミックも確か2歳前後から始めたと思いますが、同じ歳の子がいっぱいいたようですので、ことさらYちゃんが早くに開始したということでもなさそうです。ただ、公文の教室は昨秋からですが、その教室で3歳児としてはYちゃんが先鞭を付けたようで、親の付き添い付きならやれるということが分かって、最近は同年の子が増えてきたとか。
 息子や娘が子ども時代、我が家でも幼稚園の3年保育のほか、水泳、ピアノ、画を習わせた時期がありましたが、年齢的にはもっと行ってから始めましたので、Yちゃんも含む最近の子ども達の早期教育ぶりには戸惑いも覚えます。ある研究論文からの引用によれば、乳幼児の早期教育については、賛否さまざまな意見があるようです。
  まず、その必要性を認める立場からは、「大脳生理学に基づく『才能逓減の法則』というのがあり、教育は早く始めるほど高い能力が育ち、才能が伸びる可能性は年齢とともに急速に減っていく。脳が急速に発達する3歳までの間に、外からの刺激を受け止め、パターン化し、記憶するという最も基本的で重要な情報処理の仕組ができる。また、右脳の働きも、3歳までの間がもっとも活発である。早期に教育することで、幼児の才能を最高にひきだせる」としています。そして、「早期教育をすることは、子供への働きかけの時間が多くなるので、以前よりも子供とのふれあいやスキンシップが増えて、親子関係が深まる」との意見もあります。
 一方で、早期教育反対派の立場からは、「遊びを体験しなかった幼児は、体力がつかず幼児同士のコミュニケーションがないので社会性や協調性も育たず、他人の気持ちが理解出来なくなる。遊びに熱中した経験がないと、集中力も育たなくなる」、「早期教育で受動的な学習をしている幼児は、自発性、創造性の領域の発達が抑圧される懸念がある」、「親からの評価を気にして親の期待に沿おうと努力し続けてしまうという、依存的なパーソナリティーが育ってしまい、自主性が無く、自分で自分の道を切り開いて行くことが出来ない人格に育つ」等の指摘がされています。
  どちらの意見が正しいのかはよく分かりませんが、少なくともYちゃんに当てはめて考える限り、早期教育というか現在のお稽古事は、本人にはとても良く作用しているように感じます。外好き、人好きで、何にでも好奇心の強いYちゃん自身が十分に楽しんでいて、発育にとても好ましい影響を与えているように感じざるを得ません。
 まず水泳では、水を怖がらない逞ましさが育ってきました。我が家に来たときは私と一緒に風呂に入るのですが、頭を洗った後のシャンプーを流すのに、頭の上からジャージャーとお湯を掛けるのを望み、お湯に潜るのも平気です。パパに、リトミック発表会のビデオを見せてもらいましたが、本当にうれしそうに舞台上を動き回っていました。練習にも毎回、張り切っていくそうです。公文式の教室では、プリントをパッと仕上げて、「せんせい、できまちゅたぁ」と、先生のところに持って行くのがとても楽しいらしいです。2歳から通い始めた幼稚園(に準じたもの)で外遊びや山登りを鍛えられたせいか、以前はすぐにベビーカーに乗りたがったのに、大人と一緒にいくらでも歩けるようになりました。
  吸収力が強い時期に子どもに多くの体験の場を与え、子どもが嫌がらずに熱中するならば、それを続けさせることによって、子どもはどこまでも成長することは間違いないようです。ただ一方で、大人が関わらない、子どもの自主的な育ちの機会を与えることの大切さもよく理解できるところですが、幸い、Yちゃんの家の近所では、近くの公園や家のすぐ前の道路上で隣近所の子どもが集まって遊ぶ環境があり、Yちゃんも寸暇を惜しんで自分から参加しているようです。つまり、今のところ、親が段取りを着けた体験の場と、子どもが主体的に参加できる遊びの場のバランスがまあまあ取れている状態と言えます。
 先に文部科学省が行った調査でも、子どもの頃の自然体験や社会体験等が多かった人ほど、成人してからの生きていく意欲や物事への関心、規範意識、人間関係能力、職業意識等が高いということが明らかになっています。単に頭でっかちになる内容の早期教育ではなく、子どもの強い関心や意欲を引き出す内容の早期教育を親の責任で適切な範囲行うことはやはり大切なような気がしています。
  伝承遊びの体験や農業体験など、おじいちゃん、おばあちゃんもぜひしてあげたいのだけど・・・昨夜の電話でYちゃんは、「もうくらくなったからよこはまにいけないよ。あしたはようちえんだしぃ」と言っていたそうです。