夏祭り

  先日、息子夫婦のところのLちゃんが満1歳の誕生日を迎えました。ママからの報告では、食欲が旺盛で、離乳食(というよりも普通食に近いような食)をいつも完食してさらに欲しがっている様子。知恵の発達も順調のようですが、いまだにハイハイをしていないとか。きちんと座位を保つことは出来るし、大人の膝の上に立たせると足の突っ張りもしっかりしているので、身体的に心配するところはないようですが、身体全体を使うバランス感覚がまだ十分でないのかもしれません。妻に言わせると、ハイハイをしないで直接歩き出すようになる赤ん坊は多いそうで、今年東京芸大に現役で入った○○さんもそうだったと、知り合いの学生本人とその母親から聞いた話をしたりして、全然心配していません。まあ、Lちゃんは、我が家の家系どおり、運動関係は奥手のほうなのかもしれません。
 一方、娘夫婦のところは、Kくんが感染症で入院して全快したばかりなのに、今度はYちゃんに水いぼができたとの連絡。実はこの夏、Yちゃんのパパの会社が節電対策で土、日曜出勤(月、火曜休み)となったため、土、日曜日にYちゃんの遊び相手となってくれる者がいない(ママはKくんの世話、近所の子はパパ、ママ在宅)という事情となったため、この土曜日に私がYちゃんの家の隣の市にある障害者施設で開かれる夏祭りに連れて行ってあげる予定になっていました。そこに水いぼの連絡が入り、できれば夏祭りに行く前に病院に連れて行って欲しいとの依頼となりました。
  車で朝、娘達の家に着くと、Yちゃんは風邪気味で熱があるようでしたが、夏祭りに行きたいと張り切っています。まず子どもクリニックに連れて行って医師の診察を受けた結果、水いぼと風邪症状の処置をすることになりました。胸に聴診器を当て、喉の奥の観察などをしましたが、風邪は大したことはなさそう。次ぎに足の膝の裏やその他、お腹等に合計7、8ヶ所出来た水いぼ箇所に塗り薬で痛み止めをし、30分ほど時間を空けて(その間は鼻水の処置をしました)から水いぼ採りが始まりました。看護師2人がYちゃんを優しく抱えて、医師がピンセットで採っていきますが、途中で2回ほど「痛いよう」と泣いた以外は我慢して耐え、無事に終わりました。少し痛いけれど、水いぼを採ってしまえば痒くなくなるし、プールにも行けるようになるよと、言い聞かせていたことも効果があったようです。
  薬局で薬ももらい車に乗ると、「早く夏祭りに行きたい」とせがむので、家には帰らず、そのまま夏祭りへ。この施設は、昨年の夏、パパのお父さんが入院していた病院の隣にあり、お見舞いの帰途に一家でたまたま夏祭り中のこの施設に寄って、とても楽しかったというところです。今年も同じ時期に開催されることが分かったため、パパ、ママに代わって私が連れて行く次第になりました。施設に着くと、大音量のスピーカーから楽しい音楽が流れる中、まずいろんな模擬店を見て廻り、お腹が空いていたので焼そばを買おうとしましたが、Yちゃんは私の手をぐいぐいと引っ張って奥の方を目指します。そこでは綿菓子を売っていました。これがYちゃんの一番の楽しみだったらしく、それを手にして頬張りだしてからやっと落ち着きました。ホットドックと焼そばを私と分け合って食べてから、屋内体育館でやっていた風船すくいやバルーンアート(子どもの希望通りのものを風船で作ってくれる。Yちゃんはプードル犬を作ってもらった)等を楽しみ、また外に出て、陽ざしが強かったので、ある模擬店のテント内に入れてもらい休憩しました。
  そこに、この施設の利用者(すべての方が知的と視覚の重複障害)の方が付き添いの職員と一緒に来てアイスクリームを買っていました。かなり歳の男性で、夏祭りらしく浴衣を着ています。すると模擬店担当の女性職員が、「○○さん、浴衣が涼しそうで良いですね。とても似合いますよ」と大きな声。その利用者の方はにっこりと、とてもうれしそうでした。店内の椅子に座って冷たいゼリーを食べていたYちゃんはその光景を真剣な表情で見ていましたが、私が、「あのおじちゃんは目が見えないんだよ。目が見えないのは大変だけど元気だよね」と声をかけると、Yちゃんは一瞬目をつぶり、目が見えないことを体験している様子です。私の30年来の知人に脳性麻痺の方がいますが、彼が我が家に電話をしてくると、、電話口に出た者は誰でも、言語障害の彼の言葉を真摯にしっかりと聞き取ってやりとりしてから私につなぐように徹底してきました。いろいろな障害を持つ方がいて世の中が構成されていること、みんな同じ仲間だということを、息子や娘に次いでこの子たちにも、しっかりと伝えていきたい思っています。
  1時間半ほど会場にいて、Yちゃんはまだ帰りたくなさそうでしたが、診療後でもあるし、相変わらず少し熱っぽくもあったので、切り上げてママの元に。車の中では、途中にある公園やお店を指さしては、「幼稚園で来たことがあるよ」とか、「パパとママと来たことがあるよ」とか教えてくれます。一度でも来たことがあるところを覚えている子どもの記憶力に感心します。Yちゃんの日常の生活圏もよく分かった一日でした。夜、娘からの電話では、熱はすっかり平熱に下がったとのこと。Yちゃんからは「お祭りに連れて行ってくれてありがとう」という言葉をもらいました。