夏休み

  5月に生まれた第2子のKくんの世話で忙しい娘にとって、幼稚園が夏休み中のYちゃんをどう退屈させずに過ごさせるか、大きな課題のようでした。節電対策のためにパパの会社が土、日出勤、月、火休日となったため、月、火はパパがYちゃんをあちこち連れて行ってくれるのですが、問題は土、日。近所の子ども達のパパは今までどおり休日のところが多く、一家で出かけたりしているので、Yちゃんの遊び相手となってくれる友達もいないようです。いきおい、Yちゃんは朝からディズニーのテレビ番組などを観ながら過ごす時間が増えた模様。
  それでも、8月上旬はパパの会社の夏休みを利用して従姉(私の姪)夫婦の持つ軽井沢の山小屋を借りて、一家で1週間滞在したり、中旬には私主催の、YちゃんとLちゃんとの「合同お誕生会」を楽しんだり、下旬には私の妻にKくんを預けて、幼稚園の友達と一緒に「プリキュアショー」に連れて行ったりと、Yちゃんを楽しませる努力をしていました。しかしながら、私たち夫婦でこの週末に河口湖の山小屋に行く予定を娘に告げたところ、夏休み最後の楽しみとして、ぜひYちゃんも連れて行ってほしいとの依頼となった次第です。
 幼稚園のお泊まりキャンプ以外には親元を離れて夜を過ごしたことのないYちゃんなので大丈夫かなとも思いましたが、当の本人は大変楽しみにしている模様。私たちも6月以来、Yちゃんと久しぶりにゆっくり遊べる時間となるので、喜んで連れて行くこととなりました。
  いつもは東名高速を使っていくのですが、今回はYちゃんを家まで迎えに行って、そのまま中央高速を使って大月経由、河口湖へのコース。ところが、中央高速に乗ってほどなくしたら、大渋滞が始まりました。小仏トンネルの中で車4台が絡まる事故があったとかで、救急車や消防車がサイレンを鳴らしながら車列の間を駆け抜け、レッカー車が路側帯を走ります。この事態に、Yちゃんは「火事なの?、火事なの?」と心配そう。「車と車がぶつかったみたいだよ」と説明しても、「火が出てるの?車が壊れてバラバラなの?」と、心配が尽きません。「おじいちゃんの車もトンネルまで行くの?」と不安そうなので、「トンネルを通らないと”みんなのおうち”(河口湖の小屋のこと)に着けないので行くけど、まだいっぱい時間がかかるので、その時にはもうなんでもなくなっているよ」と言い聞かせます。妻もいろんな楽しいことを話しかけて気を紛らわせます。
  渋滞は小仏トンネルまで。そこを抜けたらウソのように快適に飛ばせました。まずはトイレタイムと、トンネルから最初の休憩場所である藤野PAに車を入れたら、同じような人が多くて、駐車にも難儀しましたが、無事に済ませ、次いで談合坂SAで昼食を摂りました。家から持っていったおにぎりと麦茶。Yちゃんにはご所望の「かき氷」も食べさせました。腹ごしらえも出来たところで、一気に河口湖へ。Yちゃんの思い出づくりに妻と予定していたのは、湖でスワンのお船に乗ることと、どこかの子どもも楽しめるミュージアムに行くこと。Yちゃんにもその計画を告げて、気分を盛り上げます。着くのが遅くなったので、小屋に向かう前に直接に湖畔に行きました。
  ところが、早速、目星を付けていたボート屋で交渉したところ、「今日は風が強くて船が流され危険なので、スワンの船は出せません」とのこと。とは言っても湖には3隻ほど同型船が出ているので、「あそこには出ているじゃない」と迫ると、「あれも少し流されています。それに、あれは若い男性が漕いでますから・・・」と、私も男なのに、若くないので貸せないというような言い方です。孫を楽しませようと、せっかくここまで来たのだからこちらも引けません。昔から手こぎボートには自信がありますので、足こぎでも何とかなると思うし、「沖合に出ずに、そこら辺りに出るだけでいいから」と、再考を迫るも、つい先日の天竜川下りの転覆事故で事業者の責任が問われたことも影響しているのか、絶対に貸すと言いません。
  ここでYちゃんが「スワンのお船に乗りたいよぅ・・・」などと大声でも出し始めたら事態を一層こじらせるところだったのですが、突然、「スワンのお船が流されたらYちゃん怖いから、乗るのイヤだ!」との宣言。大人のやりとりを聞いていて、子供心に事態を収めたかったのかもしれません。妻も、「仕方ないじゃない。遊覧船にでも乗りましょうよ」と、遊覧船のほうを指さします。というわけで、私だけがやや不満を残しつつ、ちょうど出港間近だった遊覧船に乗り組みました。これが結構、正解。転覆の危険もなく、デッキに涼しい風が吹き通って、河口湖大橋の下をくぐって西の端まで行って戻るだけのコースですが、富士山や周辺の山々、湖畔の風景などの展望が素晴らしく、Yちゃんも船内をあちこち移動してつかの間の船の旅を楽しんでいました。

※遊覧船
  船を下りて、次いで向かったところは北原ミュージアム。大池公園の駐車場に車を停めて、洒落た外観の建物に入ります。ここは、入口に「幸せな時代の物たち」と副称されているが、テレビの「お宝鑑定団」で有名な北原照久氏のブリキのおもちゃなどのコレクションがあるところ。2階建てのそれほど大きなスペースではありませんが、各部屋に昔なつかしい、昭和20年代から30年代頃のおもちゃやポスターやレコードジャケット等々、古き良き時代の味わいのある品々が壁一面に貼られたり、きれいなケースにびっしりと入って展示されています。お宝鑑定したら総額いくらになるのか、相当に贅沢なコレクションであるのは間違いありません。
  私が一番関心があったのは、古いレコードのジャケットの展示。いわゆるオールディーズの音楽のLP盤や、それと同時代の日本の歌謡曲のEP盤など、思わず声を上げそうになる懐かしいものばかりです。私の山小屋にはテレビは置かず、オーディオセットだけを持ち込んで、静かな環境の中でのんびりと音楽を聴くのを楽しみにしています。特に最近の楽しみは、古いレコードを聴くことで、小遣いで初めて自分のレコードを買った高校生の頃(50年前!)からのものを含め、手元に残っていたジャズやポップス、クラシックなどのレコードを楽しみ、さらに今後は、中古レコードの収集も始めようと思っていた矢先だったので、このミュージアムのコレクションが本当に羨ましくなりました。
  その他、昔の自動車などのブリキのおもちゃ類も昔の子どもには懐かしいものばかり。まさに中高年が楽しめるミュージアムです。一方、Yちゃんはそれらの観覧にはそこそこ付き合っただけで、強い関心は、1階の真ん中の部屋に置いてあったシルバニアファミリードールハウスのセット。これはコレクションというわけではなく、近くに休憩用のソファセットもあったので、来館の子どものための遊び場かもしれません。とにかく、自由に触って遊べるため、これを見つけたYちゃんは他に子どもがいないこともあって、小1時間一人でこれに張り付きっ放し。なにやらつぶやきながら、動物の人形やミニチュアの家具などをあちこち動かしたり並べたりと忙しく、さすが女の子、ままごと遊びが大好きのようでした。

ドールハウス
  午後4時頃になったので、以上で湖畔の遊びは終了。そこから車で15分くらいのところにある小屋に行きました。着くなりYちゃんは、食卓の椅子に座って、自宅から持ってきたお手紙セットの便せんに、鉛筆でなにやらいっぱい「字」を書き始めました。そして、雨戸開けや荷物片付け、布団への乾燥機セットなどが終わった私に向かって、「はい、おじいちゃんにお手紙」と渡してくれました。そういえば、自宅で車に乗るなり、おばあちゃんに手紙を渡した後、「忙しくておじいちゃんには手紙を書くの忘れちゃったの。手紙欲しかった?」と言うので、「とても欲しかったけど、どんなこと書いてくれるつもりだったのかな?」と聞いたら、「おじいちゃん、いつもありがとう。おじいちゃん、大好き。と書くの」とのことでした。これがその懸案だったお手紙ということのようですが、いっぱい並んでいて「字」のように見えるのは実は○ばかり。ただ、封筒の裏面のサインは明らかにYちゃんの名前に見えます。どうやら、自分の名前だけは書けるようになったようです。Yちゃんから貰った最初のお手紙として大切に保管しておきたいと思います。
  少し休んで6時頃、だいぶん薄暗くなってきたので、小屋の前に出て花火に興じた後、本日最後のお楽しみのイタリアンレストラン行き。河口湖の端のほうに夫婦二人で開いているとても美味しい店があり、小屋からやや距離はあるのですが、何度も利用しています。ここでもYちゃんの本領発揮。生ハムやハーブ等が載ったブルスケッタ、シェフのお薦めサラダをきちんと大人並みに食べた後、パスタはトマトソースのものとクリームソースのものとを取ったのですが、まずトマトソースのものを夢中で食べています。そして、私がクリームソースのものを小皿に2回目のお代わりをしようとしたら、「Yちゃんもそれ食べるんだから、残しておいてね!」と気が気でない様子。もともとパスタが好きな子ですが、この店の味は格別なのでしょう。デザートのアイスクリームも、ほんの少しだけおばあちゃんにお裾分けしたものの、全部きれいに食べました。
  小屋に戻り、歯磨きをして、私と入浴した後、和室に3つ並べて敷いた真ん中の布団(ハローキティの枕付き)に。しばらくは興奮して寝付かず、隣の布団のおばあちゃんとおしゃべりをしていましたが、その内に熟睡しました。ただ、寝相はあまり良くなく、8月とはいえ標高1千メートルのこの辺りはかなり冷え込んでいるのに何度も掛け布団からはみ出ているので、その都度、布団を掛けてあげました。
  翌朝は、すっきり目覚めて起きてきてトーストで朝食。ヨーグルトを2本も飲みました。その後は帰り支度をしてまた河口湖畔へ。朝早くから開いている直売所で桃とブドウをパパとママへのお土産に買って、大池公園の駐車場に向かいました。そこで車を停めてから、3人で河口湖大橋の右側を全周(約4Km)するウオーキング。ほぼ湖全体にウオーキングトレイルが整備されているので、車の心配なく歩けます。YMCAのウオーキング教室で本格的な方法を習った妻が両腕を大きく降りながらどんどん遠ざかって行くのを、遠足幼稚園で鍛えているYちゃんがときどきダッシュして追いついて一緒に歩き、その後ろを私が見守りながら歩くという案配です。途中で一人旅中のスペインの若者と少し話をし、写真を撮ってやったりもしました。昨日のスワンのお船の乗り場に来たら、今日は風も凪いでいるので、利用可能の様子。昨日と違う担当者が「乗りませんか」と客引きをしますが、パス。Yちゃんがまた河口湖に来たときの楽しみに取っておくことにしました。

※湖畔のコスモス
  元気にスタート地点まで戻り、みんなで魔法瓶の麦茶を美味しく飲んでから、一路帰途へ。Yちゃんはパパとママにまた会えるためか、少しばかりハイテンションです。談合坂SAで昼食を摂り、清里高原のジャージーミルクのソフトクリームを舐めてから、昨日とは打って変わって全線空いている中央高速を通って、午後2時頃にはYちゃんちに無事帰宅しました。