大泣き・・・

  孫との交流はいつも笑いと優しさに満ちて、楽しいことばかりなのですが、ごくたまには、大泣きをされて、戸惑ったり、心配させられたり、対応を間違ったりすることがあります。
  昨年暮れにLちゃんが両親と一緒に我が家に泊まりがけで遊びに来てくれたときのことです。一家の車が我が家に着いた直後、待ちくたびれていた私は、荷物下ろしが忙しい息子夫婦を待っておれずに、後部座席のベビーシートの留め具を外し、Lちゃんを抱え上げて家の中に連れて行きました。その瞬間です。Lちゃんが火がついたように泣き出し、両手両足をバタバタ。両親が入ってくるまで泣き止みませんでした。突然、両親の元から見知らぬ(ということは絶対にないのですが・・・)おじさんに拉致されたような不安を感じたのでしょう。後で冷静に考えればそのようなことだったのですが、そこらの配慮が足らない失敗でした。
  それで学習した私は、この5月連休にまた一家で2泊3日遊びに来てくれたときは、Lちゃんが我が家の雰囲気や祖父母の存在に慣れるのをゆっくりと待ちながら、少しずつアプローチしていくと、これが大成功。電子音楽の絵本で自分の好きな童謡を流し、それに合わせて踊る、などの余興を存分に見せてくれました。で、いつものように私が風呂に入れてあげてもおとなしくしていたのですが、初日は。ところが2日目の入浴の時。どんどん歩けるようになったLちゃんですから、もう大丈夫だろうと、浴槽の中に一人で入れたところ(従姉のYちゃんはこれが大好きで、お風呂に潜ったりします)、激しく大泣き。泣き止まないので、よく温まらないまま、急遽、お風呂を上がることになってしまいました。これも全く、私の不注意。いつも抱っこされて入っているのに、水深50センチほどの浴槽に突然一人で立たされて、恐怖感が襲ってきたようです。
  以上、Lちゃんに関わる大泣き事件の二つは、いずれも大人というか、私に責任がある事案。私がもっと慎重に事を運べば良かっただけの話でした。
  ところが、同じ5月の連休、子どもの日にYちゃんが大泣きした事件は、大人たちをいささか心配させたことでした。この日、Kくんの初めての端午の節句のお祝いに、娘夫婦の家にパパおばあちゃんと私たち夫婦が招かれました。ウエルカムボードが置かれ、武者兜や鯉のぼりなど、男の子の節句を祝う雰囲気が満ちています。その雰囲気と、自宅ながらきれいなワンピースを着せられた姉のYちゃんの気分はすっかりハイに。日頃はあまり食べさせてもらえないケーキやアイスクリームなども欲しいだけ食べることができて上機嫌でした。ここまでは。

  て、食後の楽しみに、Yちゃんとおばあちゃん二人、それに私の4人でカードゲームを始めました。すごろくのようにスタートからゴールまでたくさんのポイントがあり、4人が交互に、裏返しに積んだトランプのようなカードを1枚ずつ引いて、それぞれに持った自分のウマを、そこに書いてある記号と数字の分だけ前に進め、ゴールの順番を競うゲームです。ほとんどの場合、出た数の分だけ地道に進んでいくのですが、中にはワープと言って、20ポイントくらいを一挙に進めるカードを引き当てる場合もあります。最初の回は、パパおばあちゃんがワープのカードを2回引き当てたこともあってトップでゴール。それでもみんなの差はあまり開いておらず、Yちゃんは3位でした。
  そして2回めです。途中でワープのカードを引き当てたYちゃんが断トツでトップに躍り出ました。もう大喜び。ゴールまではもう少しのため、みんなで「今度はきっとYちゃんが一番ね!」と、祝福します。と、ところがです。その後の2巡目にYちゃんが「今度こそゴール」との思いを込めて引いたカードが、後ろにワープするカードでした。さっきよりもうんと後ろ、みんなのビリッコに戻ってしまうことになったYちゃん。悔しさをこらえきれなくなったのか、突然ゲーム盤をひっくり返し、涙を飛び散らしながら顔をくしゃくしゃにして、大泣きを始めました。側で見ていた娘が「このカードは最初に抜いておけばよかった」とこぼしますが、後の祭り。そんなカードがあることを知らなかったおばあちゃんたちと私はただ呆然とするばかり。それでも、ゲーム盤をひっくり返したりするのは悪い子なので、「そんなことをしてはいけないよ」と注意はしますが、Yちゃんへの同情心の方が募ります。
  「じゃ、今度はカルタ取りをすれば?」と、娘。Yちゃんを何とかなだめて、子どもカルタを同じメンバーで始めました。一人ずつ順番に読み札を読み上げ、その人も含めた4人で卓上に並べた取り札を取ります。ここで大人3人、誰言うことなく、取り札はYちゃんが探しやすいようにすべてYちゃんの方に向けて並べ、読み上げられて取るべき札を見つけても、すぐには手を出さずにYちゃんが手を出すまで待ち、Yちゃんがその札を確保したら、「ああ、そこにあったのかぁ」などと残念がってみせます。ひらがなは完全に読めるYちゃんなので、探す時間を少し与えればどんどん取っていきます。
  ということで、取り札が全部無くなったあと、100までなら数えることができるYちゃんに自分が取った札を数えさせたら、43枚。他には、私が2枚、パパおばあちゃんが1枚、私の妻は0枚でした。大人が3枚取ったのは、Yちゃんのパーフェクトだとあまりにもわざとらしいから?でした。
  Yちゃんは得意満面、機嫌も直って、パパと一緒に駅まで車で私たちを送ってきてくれたときも、「また遊びに来てね」と繰り返していました。が、私と妻は帰途の電車の中でも浮かない顔。ゲーム盤をひっくり返したYちゃんのわがままと、それを許してご機嫌取りをするような結果になったカルタ取りでの私たちの対応について、ボソボソと話しながら帰ったのでした。4歳児と勝負事の関係はどう捉えたらよいのか。本人の成長のためには、どういう対応が一番正しかったのか。等々。私の一応の結論は、次のようなものです。
①すごろくゲームのような、「運」だけが左右するゲームは、自分の意思や実力に関係のない要素で決まる結果を受け止める余裕や力がまだ無いので、この年齢の子には適当でない。
②実力差が大きく生じるゲームを大人と子どもが一緒にする場合、勝率半々程度、又は子どもに自信を持たせるために子どもがやや分が良くなる程度に加減して行い、決して子どもが一方的に勝つようにはしない。負けることにも慣らしておかないと、子ども同士など、加減をしてくれない相手と勝負して負ける場合などに受け止め切れず、混乱する恐れがある。
③ゲームでは勝つこともある一方、負けることもあること(勝者と敗者の双方が必ずいること)、ゲームを楽しく行うためには、みんなが等しく守らなければならないルールというものがあること、ゲームで勝ちたいと思ったら、たくさん練習して強く(うまく)ならなければならないこと、等々を、子どもに根気強く教え込んでいく必要がある。
  といったことですが、ゲームで、実社会にも通じるルールや敗者への思いやり、努力することの大切さ等を学ばせることが出来ればと思います。今度Yちゃんが来たら、早速ゲームをしよう!