柔道

  まだ終わってはいませんが、ロンドンオリンピック大会で私が一番印象に残ったのは、柔道女子57kg級で金メダルを獲得した松本薫選手の気合いと気迫です。テレビのニュース番組で観ただけですが、試合場に入ってくるときから、試合前、試合中と続き、決着がつくまでの間の、肩を怒らせ、眼光をギラギラとさせて、キッとか、カッとか、吐き捨てるように声を発しながら相手選手を威嚇しまくっている態度は、私をびっくりさせるに十分でした。あれだけ威嚇されれば、相手選手は思わず萎縮してしまい、多少の実力差なら勝ちをもぎ取られてしまいそうです。
  松本選手のこの試合態度を、品がないとか、女性らしくないとか、非難する人もいたかもしれませんが、私は、真剣にスポーツに取り組む人の態度として、むしろ賞賛されるべきものであったと思っています。柔道も格闘技の一つであれば、心、技、体のすべてを傾注して勝負に臨まなくてはならず、その心(精神)の表し方にもさまざまな態様があって当然です。松本選手が日常生活においてもこのような態度を常に取っているのであれば変人と言わざるを得ませんが、テレビでは試合後はすぐに普通の表情に戻り、しかも、その表情が誠ににこやかで爽やかだったことに大いに安心しました。
  なかなかの美人とも思っていたところ、翌日、ラジオのキャスターもそう言っていたので、私の審美眼がおかしいのでもなさそうです。新聞の解説では、「分別よりも血気がまさった一面を持つ野生児」と書かれていましたが、この人には、野生味が持つ魅力があるのでしょう。
  松本選手が、この快挙で今大会、日本初の金メダルをもたらしてくれたのに比して、男子柔道では金メダルが1個も取れずに終わり、日本柔道の凋落が感じられてとても残念です。実は私は、今ではその片鱗もありませんが、半世紀も前の中学生時代、柔道の町道場に通っていました。姉2人の下の男の子で、軟弱で頼りなかった私を鍛えようという父の考えで道場に入れられたのでした。老師範のもと、まず「受け身」を徹底的にやらされた後、背負い投げや大外刈りなどの基本技をみっちりと稽古し、心身が多少鍛えられたような気がします。高校に入る前に辞めたので初段にもなっていませんが、日本柔道は本来、このような(私ですら柔道経験のあるような)層の厚さと伝統があるはずです。男子柔道の今回の結果が誠にふがいなく、男子選手にこそ松本選手のような精神力が必要だったと、心底思っています。
 今年度から全国の中学校で、武道が必修科目となったそうですが、そのようなことが柔道日本の復活につながるかどうか。ぜひつなげてもらいたいものと期待しています。ところで、女性と柔道ですが、相撲を取ることが大好きな我が孫Yちゃん、そして、過去の「やわらちゃん」(現・谷亮子議員)や今回の松本選手等々を見ていると、子どもも大人も、女性でも柔道が好きな人や好きになりそうな人はたくさんいますし、スポーツや護身術としてもとても優れた種目です。「受け身」を徹底的に身につけていれば、転んで怪我することも少なくなります。優れた指導者をたくさん養成し、安全な環境で日本の子どもたちを鍛えていってほしいと思います。