危機管理

 少し前の土曜日の朝、6時やや過ぎ頃に娘から電話があり、「夫から昨晩、仕事が忙しく徹夜になると連絡ありまだ帰ってきていないが、実は自分も熱があってとても身体の具合が悪い。ついてはお母さんに手伝いに来てもらえないか」との趣旨でした。私が電話に出たのですが、いかにも体調不良の様子。早速、妻が駆けつけることにしましたが、11時頃まではどうしても外せない用事があり、娘の家に着くのはの午後1時頃になりそう。その旨を伝えて朝食を摂ったりしていましたら、8時過ぎ頃また娘の家から電話があり、今度はYちゃんの大きな声で、「ママは今寝ているよ。体温計で測ったら、お熱は39度8分だった。おばあちゃん待ってるからね!」とのことでした。Yちゃんの話だとKくんも元気そうだったので、その点はやや安心しました。
  とにかく妻も急ぎ、我が家の備蓄の食品類(妻の手づくりジャム、私が焼いて冷凍していたパン、たまたま前の晩にたくさん作って余っていたおかず類など)を持って、娘の家に着いたのは予定よりもやや早い12時半頃だったとのこと。そうしたら、娘は2階の部屋で臥せっていて、YちゃんとKくんは下の部屋で遊んでいましたが、食卓の上には、Yちゃんが食パンにバターを塗ってKくんに食べさせ、自分も食べた跡があったそうです。
  それからは妻がみんなに食事を準備し、娘には持参した解熱剤を飲ませるなどした結果、娘の熱もやや下がったので、娘は一人で病院へ。診察の結果、扁桃腺の炎症であったとのことで、いろいろ薬をもらって服用して、まもなくさらに熱も下がったとのことでした。そこで浮上したのが、Yちゃんは毎週土曜日の午後3時から始まるお勉強の塾に、ママと一緒に電車で一駅乗って通っているのですが、これをどうするかという問題。当然、休ませなければならないのですが、その塾に通うのをとても楽しみにしているYちゃんは、「Y一人で行ってくる。ママ、電車は何番線に乗ればいいの?」と、真剣に尋ねていたそうです。近所のピアノの先生のところや、図書館等には一人で行っているYちゃんですし、駅までの道も分かっているのですが、まさか5歳の子を一人で電車に乗せることはできません。可哀想ですが、本人がその気でも休ませざるを得ないと思っていたところにパパが帰宅。ほとんど寝ていないのに、子ども思いのパパは早速に用意して連れて行ってくれたそうです。
  
  夜帰ってきた妻の報告を聞いていて痛感したのは、今回のような場合の危機管理の必要性です。乳幼児のいる家庭で、両親が急な仕事や急病等で養育できなくなったとき、例え短時間でも大きな影響があります。幸い今回は事なきを得ましたが、日頃からそのような場合に備えておくべき事が種々あると思いました。
  まず、助け合いのネットワークをできるだけ広く持っておくこと。娘夫婦の家の隣の市には娘の夫のお母さんが住んでおられ、娘もKくんの入院時等にはYちゃんの面倒を見ていただいたりしていますが、今回は自分の病気の場合であったため、遠慮して私の妻に頼んできたようです。これら双方の親や、もしいれば近くに住む身内にお願いするのが一番ですが、そのほかにも、近所の方や幼稚園のママ仲間など、気軽に頼める方たちがいればなお結構です。いつでも頼めるベビーシッターやヘルパーさんを確保しておくのも良いと思います。
 一方、今回のように急病で母親本人の動きが取れないときに、子ども自身が周りの大人に援助を求めることができることがとても重要なことです。今回Yちゃんは、自分で私の家に電話してきて状況をしっかり伝えることができましたが、現在の電話機は短縮ダイヤルで発信できますし、小さい子にも日頃から教え込んでおけば、掛けることができると思います。連絡先の電話番号を一覧表にして貼っておくとさらに良いと思います。ただ、電話をしてもおばあちゃん、おじいちゃん等が不在ということもあり得ますので、併せて、近所の家に駆け込んで援助を求めるようなことも教え込んでおく必要があるでしょう。
  もう一つ感じたのは、おばあちゃん等が応援に駆けつけてくれるまでの間、子ども達がひもじい思いをしないよう、家の中に常に、子どもでも簡単に食べられる食品やおやつを用意しておく必要があります。Kくんより4歳年長のYちゃんは、Kくんの飲食の面倒を見たり、最近はトイレへの誘導等もできるようになったということですので、そのような用意があれば、子どもだけでもなんとか半日くらいは過ごすことはできると思います。
  世の中には、双方の実家が遠い田舎にあるとか、パパが単身赴任中とか、子どもが障害を持っているとか、さまざまな事情ががあり、前述のような危機管理の対応も容易ではない家庭も多いことと思います。地域での見守りや援助とか、公的な援助のシステムとか、みんなで考えていく必要があることも考えさせられた出来事でした。