認知症率

  新聞記事は時に、私たちの心胆を寒からしめることがあります。「認知症の高齢者462万人。12年時点。予備軍は400万人に(厚労省調べ)」という見出しの記事がそれです。厚生労働省の研究班が全国8市町で本人や家族に聞き取りをしたり、医師の診断データをもとに推計した結果、65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍になる計算になったとのことです。
  ここまでの記事なら、逆に4人に3人は認知症にならないということなので、少しホッともするのですが、「認知症の有病率を年代別に見ると、74歳までは10%以下だが、85歳以上では40%超となる。ほとんどの年代で女性の方が高い」とあります。そして、添付のグラフをよく見ると、確かに男性も女性も74歳くらいまでは低率ですが、80歳を越える辺りから有病率は急速に伸び、特に女性は95歳以上の80%超まで一直線です。男性は90歳を超える辺りからほぼ横ばいになりますが、割合は50%を越えます。長生きすれば男性も2人に1人は認知症になるし、長生きしても女性のほとんどが認知症になると考えれば、男性も、自分亡き後の妻の行く末を案じて心落ち着きません。まさにそのような、心を暗くする記事でした。
日経新聞(2013年6月2日)より
  しかしながらこの記事は、どうも私の実感とは異なります。男性でも、元職場の先輩は80歳代の多くの方が団体役員等をまだ現役で務めていますし、女性でも、Lちゃんの曾祖母さんは86歳ですが、今でもLちゃんのお洋服をデザインし、手縫いやミシンを掛けて何枚も作ってくださいます。私の母は、三味線やカラオケが好きで、70歳を超えて日本舞踊の名取りになったりしましたが、89歳で亡くなるまで意識はしっかりしていました。レーガン大統領もサッチャー首相も認知症になったと聞きますが、そのような方の一方で、呆けずに歳をとっている人も大勢いるというのが、大方の人の実感だと思います。
  とは言え、周囲をなごませるような軽い呆け症状のお年寄りは結構いるものですが、真に心配すべきは徘徊や異常行動などの重度者です。新聞記事にあった、厚労省の研究班が分類した「認知症」の定義がよく分かりませんが、症状、程度別の割合で示せば、もう少し心配の度合いは減ってくるのではないかと思います。また、何%というのは全体の平均であり、認知症になるかどうかの確率は、各個人からいえば、あくまで各半分ということになります。認知症になる半分のリスクを避けるよう、個人の努力をしっかり続けていけばよいのだと思います。いずれ医学が進歩して、認知症の予防や治療ができるようになることもそう遠くないと思います。
  そして、認知症になることを予防する最大の方策は、5月18日のブログにも書きましたが、「プロダクティブ・エイジング」を実践することだと確信しています。アメリカのバトラー博士が言われたように、「責任あるエイジング」の考え方に則し、高齢者個々人が「自分自身がより良く幸せに生きるための責任を負う」自覚を持ち、仕事やボランティアや趣味活動等に積極的に取り組むこと。そして、禁煙はもちろん、健康に良い栄養の摂取と日常的な運動の実践等に励むこと。たとえ寝たきりになっても、正岡子規が俳句を作ったように、創造的な知的活動はできます。
  もちろん、「まご追い活動」も認知症の予防には効果大だと思います。子どもの発想は常に新鮮ですし、子ども達の成長のスピードに付いていくのは結構大変ですが、とても良い刺激を与えてくれます。いつも楽しく、温かい気持ちにさせてくれる孫との交流が、私の心の張りであり、おそらく呆けも遠ざけてくれると思っています。