タブレット導入記

  電車の中や駅通路で若い人たちスマホの画面をうつむきっぱなしで見つめながら、指で叩いたり撥ねたりしている(これらの動作をタップとかフリックとか言うそうです)のを苦々しく思う一方で、自分も時代に遅れないようにやってみたい気もして、だけどあの小さな画面では読むのも無理とあきらめて、ガラケー一筋だった私ですが、このたび縁あって?タブレットを購入し、スマホに近いことをやるようになりました。
  縁というか、きっかけは、主には、日経新聞の電子版の有料会員になったことです。紙ベースの新聞があれば電子版は要らないと思い続けていたのですが、毎日、パソコンに送りつけてくる日経メールの面白そうなところを読もうとすると、途中で必ず、「これ以降は有料会員のみご覧いただけます」となってしまいます。日経の策略に腹を立てながらも、まあ月1,000円くらいならいいかと、有料会員登録をしたら、これがなかなかにメリットの多いものでした。
  私は長年の習慣で、仕事絡みの記事と「経済教室」を毎月2回の古紙回収日に合わせて切り抜いてスクラップしていた(「切り貯めてもあんまり読んでないじゃない」と妻に嫌みを言われながら・・)のですが、電子版ではそのような作業を不要とするばかりでなく、便利なことが沢山できます。個人的にキーワードを登録すればその関連の記事を毎日集めてくれる、過去5年間に遡って記事の検索ができて保存・印刷もできる、紙ベースのイメージのまま毎日全紙面をダウンロードして保存できる、所有株式や投信を登録しておくと時々刻々に損益等が分かる、などです。
  要するに、情報やデータを飛躍的に便利に取得できるようになったのですが、結局はそれを読む時間が確保できなければ意味がないことに気がつきました。私にとってそれが確保できる唯一の時間は通勤電車の中というわけで、電車内に電子版を持ち込むことを考え、その手段として検討した結果がタブレットの導入でした。スマホより画面が大きい、ノート型パソコンよりも軽くて持ち運びが簡単、等々。いろいろな観点からタブレットが最適と結論づけた次第です。
  どのようなタブレットを買うかということで、早速検討を開始。「物欲が無くなったら歳をとった証拠」とは、エッセイストの嵐山光三郎氏の言ですが、私にも久しぶりに買いたいものができて、うれしい限りでした。どのようなタブレットを購入するかでは、選択肢がいくつかあります。まず、OSとして、アップル社のiOSかグーグル社のアンドロイドかということ。大きさとして、7インチ型か、10インチ型かということ。インターネットとの接続をどういう形で行うかということ。搭載メモリも、16GB、32GB、64GBから選ぶ必要があります。
  結論から言うと、私が買ったのは、iPadミニ(64GB)です。韓国サムスン電子製が世界の9割を占めるというアンドロイドタイプよりも、パソコンはウインドウズ一筋で来たものの、スティーブ・ジョブス氏が創設したアップル社製のIT機器を一度は持って見たいと考えました。
  iPadにするかミニにするかということでは、主には電車の中で新聞や本を読むためにという用途を考え、10インチ近いiPadよりも小さい「ミニ」にした次第です。アンドロイドタイプの7インチタブレットに対し、iPadミニは7.9インチとややワイドなのもグッドなところです。電子書籍をどんどんダウンロードしたいし、孫の写真をたくさん入れてスライドショーで見ることなども考え、メモリ容量は最大の64GBにしました。
  インターネットとの接続は、主に自宅と職場で使うことを基本に、自宅用にNECの無線LANルータを買って光ファイバルータとWi−Fiでつなぎました。職場には既に無線LANがあります。駅などの公衆LANも使えるようですが、電車の中など移動中も使えるようにするかどうかはやや悩んだところです。どこでもつなげるモバイルルーターもあるようですが、月額3,800円の固定経費がかかります。通話やメール、最小限のインターネット接続はこれまでどおりドコモの携帯電話で行うので、移動中はダウンロードしたものを読んだり見たり聞いたりに徹することに割り切りました。

  で、タブレットを導入して約一週間が過ぎましたが、私の生活はかなり変わりました。まず、朝起きてすぐにパソコンでメールをチェッックするとともに、iPadミニのケース(別途購入した合成皮革製で、カバーを閉じると電源がスリープ状態になり、開けるとメニュー画面になる優れもの)のカバーを開けて日経新聞のアイコンをタップし、朝刊を自動ダウンロード。終わったらカバンに入れ、朝の通勤電車の中で熟読します。紙の新聞は家の中で暇なときしか読まなかったので、これまでよりも情報量がうんと増えました。
  帰りの電車では、夕刊や電子書籍を読んだり、疲れを癒やすために音楽を聴いたり(パソコンのiTunes経由でフォークソングクラシック音楽などを同期済み)しています。夜間や休日は、3人の孫の写真(膨大な量から約500枚をセレクト)をスライドショー(音楽、特殊効果付き)で流して見たり、電子書籍の品定めやダウンロードをしたり、膨大なアプリの中から面白そうなのを探したりしていると、あっという間に時間が経ってしまいます。
  苦笑いをしたのは、一昨日、昔の職場の仲間と会ったので、タブレット生活の報告でもしようと思っていたところ、なんと彼のほうから先にiPadを取り出したことです。私と同じような革のケースのこなれ具合を見ても、かなり使い込んでいる感じ。実際、メールの送受信や、カレンダーには仕事や遊びの予定等がたくさん入っています。ミニよりも大きい画面はやはり見やすくて、このサイズのほうが良かったかなとも思いましたが、彼のほうは私のミニの手軽さをうらやましがっていました。
  スマホが若い人向けなら、タブレットは中高年の持ち物。いずれにしても、当面はタブレット漬けになりそうな気配です。