Yちゃんの成長

  8月下旬、毎年恒例化した、大学時代の友人4人組での富士山周辺でのハイキングとゴルフの合宿を終わって自宅に戻ってきたら、娘一家が泊まりがけで遊びに来ていました。今回の合宿は、ハイキング当日がかなりの雨だったために途中で下山したり、小屋で私が飲み過ぎてダウンしたりなど、ややハプニングもありました。その、旧友たちとの楽しかった3泊4日の想い出をみんなにペラペラとしゃべった翌朝のことです。
  Yちゃんから、「おじいちゃん、傘さしてお山に登ったの?」「途中で引き返したの?」という質問。「そうだよ。片手で傘さして登ったんだけど、ゴツゴツの岩ばっかりで転びそうだったし、曇っていて景色が何も見えないから、みんなで話し合って途中で引き返したんだよ」と答えました。「登山口からいきなり急な登りだったんで、息も上がってきつかったし」と、余分な回答も。
  するとYちゃん、「Yたちが登るときは傘さして登ったりしないよ」「Yはお山登っても全然きつくない」とのこと。実は私は登山用のレインウエアも持って行っていたのですが、関西から来た友人が傘しか持っていなかったし、着ると蒸し暑そうだったから、みんなと同様、傘だけさして登った次第でした。登りですぐにきつくなるのは、日頃の運動不足と前夜の飲酒のため。2,700メートル級の山3峰を登り切ったYちゃんの元気さには敵いません。
  次のYちゃんの質問は、「おじいちゃん、4種混合ってなーに?」「いっぱい飲み過ぎて倒れちゃったの?」「どんなお酒を飲んだの?」というもの。不名誉な話ですが、ゴルフをした日の夜、飲み過ぎてン10年ぶりにダウンしたことを妻や娘たちに話していたのをしっかり聞いていたようでした。で、私が「ビールと、ワインと、日本酒と、焼酎」と正直に答えていると、Yちゃんは何やらメモをしています。後で見たら、小さな紙に、「おじいちゃんがのんだもの」という表題で、4種のアルコールの名前がひらがなで書かれていました。
  このやりとりは、側にいた妻や娘に白い目で見られていましたが、さらにその日、妻や娘にひんしゅくを買う出来事がありました。それは、私がYちゃんに「アイカツフォン」なる電子おもちゃを買ってあげたことによります。昔、私の街の駅前商店街に夫婦でやっている玩具店があり、子どもが小さかった頃に怪獣やお人形などをいつもそこで買っていたのですが、駅前再開発でその店はなくなったと思っていたところ、新たに建った駅ビルの上の階の端っこに健在であることを最近発見。先日の合同お誕生会でのLちゃんとKくんの乗り物のおもちゃはそこで買いました。
  で、そのようなお店がつぶれることなく成り立つよう、時々は買ってあげたいと思っていましたので、Yちゃんを連れて行き、自由に選ばせることにしました。Yちゃんは大喜びで店内をくまなく歩き、「これが欲しい」と決めたのが前記のもの。おもちゃの携帯電話程度にしか思わなかったのですが、帰ってきて分かったところでは、実はこれは結構複雑な電子おもちゃ。自分の名前を登録し、何枚かのカードをスキャンしたり、文字を入力したりしながら、アイドルとなるための活動を行うというものでした。

  これをYちゃんは、全部にふりがなが振ってある取扱説明書を読みながら、どんどんやっていきます。私は、Yちゃんが自分で使いこなしているところに素直に感心していたのですが、妻は、Yちゃんがこのおもちゃにかかり切りになっているのが気にくわない様子。「こんな小さな画面を見っぱなしでは目が悪くなる」とか、「本好きだったのに、本を読まなくなってしまった」とか、悪影響を強調します。確かに、スマホにかかりきりの大人と一緒の感がありますし、娘は私に遠慮して文句は言いませんが、自宅に戻ったときにパパがどう思うかは気になるところです。 
  余計なものを買ってあげたなとやや後悔の念が湧いた私は、Yちゃんが自宅に戻った後もこのおもちゃにかかり切りだとやはり困るという思いに達し、思い切って、「Yちゃん、このおもちゃはおじいちゃんちに来たときだけ遊ぶことにしよう。カードは持って行ってもいいけど、機械は置いていこうね」と持ちかけました。すると、抵抗するかなと思っていたYちゃんは、「いいよ。全部置いていく。カードを持って行ってなくしたら遊べなくなるから、カードも置いていく」と、素直に応じたのでした。
  これで一件落着。聞き分けの良さも成長の証でしょう。この夏、Yちゃんはある生命保険会社主催「子ども絵画コンクール」で、東京西部の5〜6歳児部門で優秀賞をゲット。表彰式も行われました。過去も含め、我が親族関係でこの年齢で何らかの賞を得たというのは初の快挙でしたから、みんなで喜びました。
 これとやや話題が逸れますが、先述した駅ビルの玩具店を出た後、Yちゃんがおしっこに行きたくなった時のことです。私と二人で出かけたときには以前は男子トイレを使っていましたが、今回は思い切って、「おじいちゃんは外で待っているから、Yちゃん一人で女用のトイレに行けるかな?」と聞いたら、「いいよ」と、さっさと入っていって、無事に戻ってきました。
 いろんな意味で、Yちゃんの成長を大いに感じた夏でした。