古稀

 まだまだ若いと自分だけ思い込んでいた私ですが、このたびついに古稀を迎えました。つまり、古来稀なる70歳に到達したのですが、この通過儀式は、成人になったときや還暦を迎えたとき以上の大きなものがあり、腹が立ったり、嬉しかったりと、賑やかでした。
  まず、腹が立ったほうは、役所関係がよってたかって高齢者扱いすること。まず第1弾は、誕生日の2か月くらい前に来た、運転免許証の書き換え前の「高齢者運転講習」の受講の強要です。運転免許歴46年で、大型自動2輪も運転する私でも、その講習を受けないと免許証の書き換えをさせないとのこと。仕方なく講習先に予約の電話を入れたら、同じ受講の人が多いらしく、希望する日がなかなか取れません。しかも講習料が6千円もするのです。
  第2弾は、市役所から、市営地下鉄と市内バス(民営含む)の「敬老特別乗車証」なるものの交付希望の照会があったことです。バラマキ福祉のシンボルの施策で、従来からあまり良い印象を持っていなかったのですが、ついに来たかという感じ。書類を読んでみたら、所得による負担金額というのがあって、私のような微額の所得でも年間自己負担が2万円程になります。しかもこの乗車証はスイカのようなICカードではなく、改札口の駅員やバスの運転手にいちいち見せなければならないとのこと。それもノーグッド。だいたい我が家は、地下鉄やバスではなく、日頃使うのはJRばかりですので、交付申請はせず、年寄り扱いされただけの結果に終わりました。
 第3弾は、「高齢者医療証」の交付です。3か月に1回通っている眼科の受付の人から、「次回は70歳のお誕生日を迎えられた後になりますので、高齢者医療証も一緒にお持ちください。1割負担になるかもしれませんので」と言われ、これが例の1割負担を本則の2割負担に戻すかどうかでもめている高齢者医療制度のことか。今は3割払っているけど、1割になったら得したと喜ぶべきか、高齢者偏重の財政支出と忌避すべきかなどと思いを巡らせていましたところ、誕生日の翌日に区役所から届いた書類では、私の場合は3割負担で変わらないとの結果でした。しかも、負担は変わらなくとも、今後はこの高齢者医療証も一緒に提出しなければならないとのことで、腹立たしい限りです。
 このほか、来年からは9月15日の敬老の日に町会から何か祝い品を持ってこられたりするのではないかと恐れています。老人福祉法では65歳以上を各施策の対象にし、ほとんどの人は65歳からが高齢者だと思っていますが、普通に元気に暮らしている場合、65歳では役所から何も言ってきません。それに対し、70歳の節目では、上記のように、役所関係から否が応でも高齢者となったことを意識させられる通知が殺到?します。
 一方、古稀を迎えて嬉しかったことは、親族、友人、知人からのお祝いメール等がかなり来たことです。今までの誕生日にはなかったことでした。仕事が忙しいために、たまにメールが来ても「電報メール」のように素っ気なかった息子からも、しみじみとした内容のメールとお祝い品が届きました。娘のところからは、やはりメールと祝い品が届いたほか、極めつけは、誕生日当日夜の2人の孫からの電話でした。
  まず電話に出たKくんは、よく聞き取れませんが、「おじいちゃん、70歳のお誕生日おめでとう」と言っているようでした。で、私が「ありがとうね。Kくんはいくつかな?」と聞き返しますと、「2歳!」と、これは明瞭に聞こえます。すると後ろからYちゃんが、「KちゃんはVサインしてるよ」との実況報告。指を2本広げることが出来るようになったみたいです。次にそのYちゃんが出て、「おじいちゃん、70歳のお誕生日おめでとう!」と言うので、「ありがとう。Yちゃんといくつ違いになったのかな?」と聞きますと、「Yは6歳だから、70から6を引くと・・・、ウーンと・・・」と言った後、「64歳! Yもあと64歳でおじいちゃんと同じになるんだ!」と、気がついた模様です。
  次いでYちゃんは、「ハッピバースデイを歌ってあげるね」というや、天真爛漫に、「♪ハッピバースデイツーユー、ハッピバースデイツーユー、ハッピバースデイディアおじいちゃん、ハッピバースデイツーユー♪」と歌ってくれました。あまりに大声であったために、台所にいた妻も、電話口から漏れてくる歌声にニヤニヤしっぱなしです。私としては、この一人アカペラの絶唱古稀一番のプレゼントになりました。

 3人の孫の存在が私の最大の生き甲斐。これからもできるだけ健康長寿に過ごして、子どもや孫世代が幸せな生活を送られるように、ささやかながら頑張っていきたいと決意を新たにした古稀の日でした。