文房四宝

  書斎(文房)を愛する人は多いものです。私もずっと以前、「男の城」としての書斎を欲していたときがありました。しかし、独立した書斎は持てず、1階の居間の片隅に机を置いて書斎代わりにしてきて、2人の子どもが独立した後、2階の息子の部屋を私だけの書斎にすることはできました。机は息子のものをそのまま使い、書棚だけを増やしたもので、1階と2階の両方を「書斎」として使えるようになったわけです。
  ところが、結論から言えば、2階の独立書斎よりも、妻とも兼用の1階の書斎(というか、机)で過ごす時間のほうが圧倒的に多い状況が長く続いています。根を詰めて仕事関係の書きものをしないといけないときを除き、普段の読み書きは1階の机で妻の気配も感じながら行うほうが性に合っているようです。
  私事なので全くどうでもよいことではありますが、最近、この状況を大きく変えたいと思うようになってきました。そのきっかけは、簡易製本器とラミネーター器を買ったことによります。どういうことなのか、順を追って報告しますと、まず、四半世紀前のある全国研修(長期宿泊)時の同期会が今年度で解散することになったのを受け、たまたま最終回の幹事を引き受けていた私が、記念文集の編集と作成も行うことになったのです。
  できる限りコストを抑えて作成するには、製本を専門業者に委ねるよりも、簡易製本器を買って自分で作成したらどうかと考えました。自分で購入しておけば、今回の記念文集だけでなく、今後いろいろなことに使えます。ということで、まず簡易製本器を買って無事に記念文集を作成。同期生全員に配ってとても好評でした。
  家庭での創作活動のツールとして、パソコンとプリンター以外の新兵器の登場というわけです。この製本器では、文集や本の作成のほか、たくさん溜まっている雑多な資料を整理して、保管しやすいように製本するという用途にも使えます。これを使って、2階の書斎に雑然と積んでいる資料を徹底整理しようと思いつき、実際、その作業にも着手しました。
  その過程で、次ぎに欲しいと思うようになったのが、ラミネーター器です。雑多な写真の中でこれはと思うのをラミネート加工すれば、飾るのにも保存するのにも便利です。また、写真が自分で簡単にプリントできるようになった現在、テーマ毎に何枚か並べてコメントも入れたようなものを作れば、より整理されて想い出が残ります。
  第1弾として、Lちゃんの神社での七五三詣りの時の写真を文字入りで編集してA4版裏表の用紙にプリントし、ラミネート加工をしたものを3組作成。息子夫婦と息子の奥さんのご実家にも送ったら、とても喜ばれました。このほか、写真だけでなく、資料類も大切なものをラミネート加工しています。
  昔から、「文房四宝」といって、文人は、文房具の中でも紙、筆、墨、硯の4つを特に大切にし、より良いものを追求して金も惜しんで来なかったようです。私にはそんな高尚な趣味はありませんが、強いてそれに代わるものを探せば、パソコンとプリンター、そして、今回買った簡易製本器とラミネーター器ということになります。財産的な観点でも、国産でない格安パソコンに国産大量生産のプリンター、それに、量販店で買った、簡易製本器とラミネーター器を合わせても1万円未満といった「四宝」です。
  で、1階と2階の書斎の使い方をどのように変えようとしているのかということですが、前記した私の四宝を、1階の居間に置いて作業場みたいな雰囲気にするのは妻が許さないでしょうから、今後は、2階の独立書斎を「工房」として活用。そちらをメインに過ごしたいと考えています。
  イメージとしては、まず、これからもなお学ぶ「インプット」の部分は、これまで「積ん読」状態であった本の読書と、新聞や新本電子版のタブレットでの閲覧で行います。これは、机の前でというよりもソファに座ってとか、電車の中でということになります。
 そして、呆け防止のためにも特に必要な「アウトプット」の部分と、そろそろ必要な身辺整理の部分は、四宝を駆使して2階書斎の工房で行います。私の以前の職場の友人は、1、2年おきに既に8冊も立派な短歌集を自費出版していますし、以前、ブログでも紹介した大学時代の友人の本は、今もアマゾン等で好調に売れているようです。私にはとてもこのようなアウトプットはできませんが、密かに期していることがあります。
  それは、高校生の時に体験した、ある歴史的、社会的な事件を題材として、小説を書いてみたいということです。妻に対しては、結婚以来、ときどき口走り、「1行も書いていないくせに・・・」と、てんで相手にされていませんが、いろんなことを、いつもギリギリになってからつじつま合わせしてきた私の人生。何年かかけて、必ず実現したいと思っています。
  思いもかけず、このような前向きな気持ちを湧かせてくれたのが、私の文房四宝です。