ひとり農業

  今年のゴールデンウイークのうち三日間は、まるまる「ひとり農業」で過ごしました。といっても、庭の畑の畝作りをし、そこに地元の農協(横浜でも、まだ農協があります)で買ってきた野菜やハーブの苗を植えたり、その畑が足りなくなってきたので芝生を少し剥いで耕し、新しい畑にしたり、小さな木の植え替えをしたり、庭全体の草むしりをしたり、堆肥作りをしたり、隣地の竹林でタケノコを掘ったり(竹林所有者からは、竹の葉っぱが我が家の雨樋を詰まらせたり、地下茎が我が家の庭を荒らすため、「自由に採ってください」といわれている)などに、ひとりで励んだということです。
  新緑がまばゆいほどに美しいなか、穏やかな日差しと心地よいそよ風に包まれて、額に汗しながら土をいじり体を動かし続けたひとときは、まさに至福の時というべきものでした。ロマンチスト?の私は、昔から田舎暮らし的なものにあこがれを持っていて、特に40代の仕事が一番忙しかった頃には、現実逃避の空想もあってか、脱サラして信州の山里で小畜有機農業をやりたいなどと口走り、その関係の本を買ってきて読みふけったりもしました。 
  もちろんそんなことが叶うこともなく、しばらくは庭でニワトリを飼って卵を産ませたり、野菜や草花を種から育てたりしていた時期もありましたが、その後はプロの育てた苗を買ってきて植え付ける程度のことしかやっていません。
 しかし世の中には、私と同じようなことを考えていた人たちも多いようで、定年前から、あるいは定年退職後、田舎に移り住んで農業を始めた人たちの体験記のようなものは、たくさん出版されています。また、土曜日夕方のテレビ番組「人生の楽園」には、定年退職後に夫婦で田舎暮らしを始めた人たちがよく紹介されます。金曜日夜のTBSテレビ「キンスマ」の中でのヘルムート渡辺氏のひとり農業の特集をたまに観ますが、ヘルムート氏のキャラクターもあって、自給自足の田舎暮らしや一昔前の日本の暮らしの良さがよく伝わってきて、とても癒やされます。
  田舎暮らしは今後ともあこがれに留めることになりますが、ただ、孫たちには、なにもかもが無機質なデジタル化した時代が進みそうなだけに、自然の素晴らしさをずっと感じ続けていってほしい。そのきっかけの一つを、我が家に来たときに提供できるようにだけはしておきたいと、願っている次第です。