ハイキング

  ”遠足幼稚園”で毎日歩き、時々は本格登山もしていたYちゃんですが、小学校入学以来、様子を聞いてみると、以前はパパと一緒に習いに行っていたテニスも辞めたそうだし、学校の体育以外は、近くのプールに行くくらいしかしていない様子です。それではせっかくこれまで鍛えてきたのがもったいない。ならばおじいちゃんが時々一緒にハイキングでもしてやろうと思い立ち、この日曜日に鎌倉の源氏山・大仏ハイキングコースを一緒に歩いてきました。
  パパと私の妻は他の用事があって参加せず。まだハイキングは無理な弟のKくんは、ゴールデンウイークに家族で沖縄旅行して以来、海が好きになったというので、ママが同時刻頃に鎌倉の海(由比ヶ浜)に連れて行くことになりました。で、私とYちゃんは北鎌倉からハイキングコースを歩いて大仏様のほうに降りてから、お昼頃に海岸でKくんたちと合流することにしました。
 北鎌倉駅で降りて、円覚寺方面の改札口は混んでいましたが、線路をまたいで行く駅舎側の改札はそれほどでもなく、「子どもスイカ」(というのがあるのを初めて知りました)を改札口にかざして外へ。東慶寺の前を通って浄智寺の横から早速ハイキング道に入りました。Yちゃんは元気にどんどん登っていきますので、「後で疲れないよう、ゆっくり行けば良いんだよ」と後ろから声を掛けます。ゴールデンウイークの頃と違って、人は少ないのですが、それでも時折向こうから降りてくる人もいて、「こんにちは」と挨拶をしてくださると、Yちゃんもうれしそうに「こんにちは」と返しています。たまにトレイルランをしている人もいて、後ろから「すみません」と言いながら駆け抜けて行きます。
 ※テントウ虫さんこんにちは
  木陰を歩くとまだひんやりとしていて、半袖のポロシャツ姿のYちゃんは途中でタオルを肩に羽織りました。まずは日野俊基像のところで一休み。私は、リュックサックを担いだまま、ネットで出来た左右のポケットに入れた飲み物のYちゃん用をYちゃんに取らせ、ついでに「おじいちゃんのも取って」と私のも取ってもらって、一緒に大きな岩に座って飲みました。そこから少し歩くと日野俊基を祀ってある葛原岡神社。鎌倉幕府を倒そうとして非業の死を遂げた人が同じ鎌倉市内に祀ってあります。
  今日は時間もあるので、Yちゃんに神社のお参りの仕方などもじっくり教えようと、まずは手水場へ。ひしゃくを持って片手ずつ水を掛けさせ、次いで、細い管から流れている水をひしゃくに受けて口に含ませると、Yちゃんは冷たくて気持ちよかったのか、「飲んでもいいの?」と聞きますので、「いいよ」と、飲ませました。
  本殿(と言っても、ここのはごく小さい)では、静かにお賽銭を入れさせ、「おじいちゃんのとおりにするんだよ」と、一緒に、2回お辞儀をして、2回柏手を打ち、その後また1回お辞儀をしました。お参りが終わると、急にYちゃんの目が輝いて、「おみくじをしたい」とのこと。おみくじ売り場に行くと、「恋みくじ」と称して、縁結びにどうのこうのとたくさん書いてあります。「これはYちゃんにはまだ早すぎる」と困っていたら、少し先に普通のおみくじも売っていました。ちなみに、恋みくじは1回200円、この一般みくじは100円でした。
  透明のアクリル板で出来た四角い箱にたくさんのおみくじが入っていて、上の丸い穴から手を入れて1枚引くようになっているのですが、Yちゃんは真面目な顔で何分間も混ぜてなかなか手を出しません。「もういいんじゃない」と決断させ、引き出させて開けさせると、「大吉」とあります。「すごい!一番いいのが出たよ」と褒めながら、中を一緒に読む(ところどころにふりがなも振ってある)と、「待ち人現れる。連れあり」と書いてありましたので、「後で海岸に行ったら、ママがKくんを連れて待っているということだよ」と言いました。
  「願い事叶う」ともありましたので、「お願い事があったら神様が叶えてくれるということだよ。Yちゃんの願い事は何かな?」と聞きましたら、「・・・・・」とすぐに出なかったので、「おじいちゃんが元気に百歳まで長生きしますようにって、願ってくれないかな」と言いましたら、「いいよ!1億歳まで長生きするようにって、お願いをする」とのことでしたので、「1億歳まで生きたらYちゃんが先にいなくなっちゃうじゃないか」「いいことがある。Yちゃんは1億2千歳まで長生きしますようにって、一緒にお願いをしたら?」などと、他愛ないおしゃべりをしながら、次のところへ。
  源頼朝公の像がある源氏山公園に行く予定でしたが、Yちゃんが「お金を洗うところ」に早く行きたがったので、パスして銭洗弁財天に。まずここは、入り口の狭いトンネルが子どもに面白そうなところですので、実際には比較的に新しいのですが、「ここは昔、人が何年もかけて岩を手で掘ってつくったんだよ」と説明。中に入ると結構賑わっていました。ここでも手水で手を清めてから、早速、奥の洞窟の中の岩場に貯まった湧水で銭洗いを開始。Yちゃんはざるを持って来るや、ママからもらってきたという10円硬貨をそれに入れて、ひしゃくで何杯も水を掛けたり、ざるごと水に浸けたり。
 10円玉の次は100円玉を出してまた同じことを繰り返します。「こうしているとお金が何倍にも増えるんでしょう?」と聞くので、「うん、1回洗うと大体倍になるけど、Yちゃんは40回くらい水を掛けたから、その100円は4千円くらいにはなったよ」などと、いい加減なことを言ってしまいました。日本の宗教は現世御利益的なものが多いなかで、お金が増えるというのはその最たるものとも言えますが、この神社は、源頼朝公がここに詣って民の生活の安定を願ったという伝えもありますので、今どきの新興宗教のそれとは本格度が違います。
  お参りを済ませた後は、狭い境内に並ぶ売店にYちゃんがずんずん向かうので、何か買ってやることに。昔風のアイスバーを選んだので、私が洗ってまだ湿り気の残った千円札で支払うと、売店のおばさんが、「おじいちゃんと一緒でいいわね。これとても美味しいわよ」と、にこにこ笑ってYちゃんにアイスを渡してくれました。
 ※銭洗弁財天で
  またハイキングコースに戻りましたが、アイスを舐めながらではやや歩きに支障が出たため、大きな岩のところで小休止。「おじいちゃんに半分ちょうだい」と言っても、どんどん食べて、やっと最後のひとかけらを私にくれました。その後はピッチを上げて大仏様のところに向かいますが、時々出てくる急傾斜のところも段差の大きなところも全然へっちゃら。遠足幼稚園の効果はしっかりと残っていました。私も快調そのもの。次は高尾山に一緒に登りたいと思った次第です。
  大仏様のところに降りてきて、いつものように狭い歩道を人混みに押されながら、長谷駅横の踏切を渡ってから海岸へ。携帯電話で連絡を取り合いながら、娘とKくんに無事に再会しました。Kくんは海岸で水遊びをたくさんしたそうで、上機嫌でした。広い砂浜に設けられた舞台で行われているフラダンスショーを遠くに見ながら、シートを広げ、持参したおにぎりをみんなで食べました。Kくんがのんびり食べていたら、上空からトンビが急降下しておにぎりをさらおうとしたためびっくり。Yちゃんはあわてて弟をトンビの襲来からかばっていました。野性味もあるアウトドアでの食事です。
 ※由比ヶ浜海岸
  後は少しだけYちゃんも海岸で水遊びをしてから、鎌倉駅まで向かいましたが、ここでハプニング。途中の喫茶店のテラスで休んだとき、大人は珈琲を飲んでいるのに、Yちゃんは珍しく何も要らないとのこと。あげくは、そこを出てしばらく歩いていたら、突然、「お腹が痛い」と言い出して、「トイレに行きたい」と騒ぎ出しました。近くのお店のトイレを貸していただいて事なきを得ましたが、どうやら、お腹をこわしていた様子。
  銭洗弁財天で買ったアイスの話を聞いたママから、「おじいちゃんに半分あげないで全部食べたりするからよ」と叱られて、ちょっぴり可哀想だったYちゃん。大きなアイスを買ってあげた私にも責任がありました。でも、電車に乗って、私の家まで帰ってくるや、何事もなかったかのようにすぐに元気回復したYちゃんでした。またおじいちゃんとハイキングに行こうね!