麻雀

  30数年ぶりに麻雀をしました。私の麻雀は、学生時代に帰省した折、姉夫婦に教えてもらって家庭麻雀を少しやったのが始まりですが、大方の学生のように雀荘に足を踏み入れることはありませんでした。社会人となった後、学生時代の友人の勤め先が持つ倶楽部で時々同期会を行っていたのですが、その倶楽部に設備があったので、自然と麻雀大会の形になったのが、割と本格的に麻雀をやった時期だと言えます。
  職場関係では一切やらず、前述の学生時代の同期会の麻雀大会も、友人の転勤でその倶楽部が使えなくなってからは自然消滅し、30代前半頃からは完全に麻雀と縁が切れていました。そもそも、囲碁派の私としては、運がかなりの要素を占めること、始めると深夜まで長引いて不健康なこと、金を賭けて行うことなどから、麻雀はあまり好きではありませんでした。職場で毎月給料日に、若い職員が参加メンバーの1ヶ月間の勝ち負け額を記載した「タテヨコ表」を持って集金して廻ったりしているのを、冷ややかに見ていたものです。好きではないから少しも強くなれなかったのが、麻雀と縁が薄かった主因かもしれません。
  その私が、ひょんなキッカケから、また麻雀を始めることになり、最近かなりはまっているという報告です。キッカケとは、毎年夏、学生時代の友人4人で河口湖の私の小屋に3泊4日し、ハイキングとゴルフ、小宴会等を行っている合宿で、昨年、雨のためにハイキングを途中で打ち切り小屋に戻った折、「こういうときに麻雀でもすればヒマつぶしにいいよな」と誰かが言ったことでした。このメンバーは、前述の、30代前半頃まで一緒に麻雀をしていた仲間でした。
  今年の合宿のプランを考えているときに、昨年のこの言葉を思い出し、「この仲間となら、遠慮気兼ねなくわいわい楽しくやれるし、特に新聞記者上がりのS氏に鍛えてもらえば少しは強くなるかもしれない」と期待が膨らみ、でも、少し事前学習をしなければ麻雀はすっかり忘れているしと、インターネットでその関係を検索していたときのことです。近年は、「賭けない、飲まない、吸わない」をスローガンにした「健康麻雀」が流行っているそうで、全国の自治体が高齢者を対象に行う認知症予防プログラムでもダントツの人気とのこと。厚生労働省も推奨していること等を、発見しました。
  我がグループは、ハイキングとゴルフと、大自然の中で身体運動は十分だし、これに麻雀で指先と頭も使えば認知症対策としてほぼ完璧ではないか、よし、これだ!と張り切ることになった次第です。早速に準備開始。麻雀牌はずっと以前、家族で香港旅行に行った際に土産に買ったものがあり(麻雀を全然していなかった時期になぜ買ってきたのか不明ですが・・・)ますが、麻雀卓がないのに気がつきました。たしか昔の電気こたつの上板をひっくり返すと雀卓になったものだがと、物置を探しましたが、とっくに処分をしていました。仕方がないので、インターネットで探し、東京の某美術工芸会社で作っている座卓、立卓兼用のものを購入。雀牌とともに、河口湖の小屋に運び込みました。
 ※購入した雀卓(パンフレットから)
  迎えた合宿の間、しっかりと麻雀を楽しむことが出来ました。まず、初日は小屋でのバーベキュー宴会後すぐに始めてから午前零時を過ぎるまで。2日目は精進湖畔のスタート地点から直登が続くきついコースを何とか頑張って富士山の展望が素晴らしい「パノラマ台」までハイキング。下山後、西湖畔の日帰り温泉に入り、いったん小屋に戻ってから夕食にいつものイタリアンレストランに行くまでの間と、そこから戻ってからまた零時頃まで。3日目は、ゴルフから戻って河口湖近くのスーパーに買い物に行ってから、バーベキュー宴会(初日は肉で、この日は海鮮)をしてから零時頃まで、といった具合です。
  全部で半荘何回やったか覚えていませんが、この合宿での我々のルールは、1日単位に勝ち負けを計算し、何点負けても、4位は2千円、3位が1千円出しの定額制としました。やはり全然賭けないのは面白くないのでそうしたのですが、結果は、3日間の合計で私が3千円、元とてもお堅い職業のI氏が2千円くらいの負けでした。トップはW氏。その他、麻雀の役の数え方や点数など、さまざまなローカルルールがあるのですが、そこはS氏をルールブックとし、すべてS氏のジャッジに従って行いました。
  久しぶりの麻雀で実感したのは、時間の進み方が早いこと。あっという間に1時間、2時間が経過しますが、何故そうなるのか、とにかく手も頭もフル回転しているからだと思いました。そして、手も頭も、4人の中で私が一番遅い。まず、ジャラジャラと卓上で牌をかき混ぜてから牌の山を築くのですが、みんなよりも動作が遅く、手が不器用なのか、築く山も私が一番短い。そこを焦りながらやり終えると、次は順次、牌を取ってきてゲームが始まるのですが、私が見やすいように牌を並び替える間もなくどんどん進行するので、右手で並び替えながら、左手で山から牌を取ってきていると、S氏が、「それは行儀が悪いよ」と言う。右手一本でやるのがマナーのようです。
  ただ、牌を取ってきて、一瞬の判断の後、要らない牌を捨てる、この所要時間がややスムーズでない時がみなそれぞれにもあり、その際は、すかさず周りから、「ドイツの週刊誌!」という声が掛かります。この辺り、30数年前当時と変わらず、可笑しくなります。うっかりドラを捨てたり、ポンすべき牌が出たのに取り損ねたり、スジがよく読めないで捨てた牌をロンされたりなど、最初は散々でしたが、何局も重ねる内に少しずつ私も大負けしなくなってきたので、みんなと同程度になるのは時間の問題だと、あきらめないでいます。
  それにしても、と思うのは、「ゆっくり麻雀」があったらなお楽しいだろうな、ということです。囲碁では長考も許され、なにより、私が経験した入段試験の際には、勝負の強さだけではなく、背筋を伸ばし、打つ直前に碁笥から1個だけ石を取って来て静かに盤面に置くといった作法が身についているかなど、囲碁をたしなむ上での品格も観察されました。単に私の頭の回転が遅いだけの話かもしれませんが、もう少々、麻雀が全体的にゆっくりと流れるならば、私にも勝機が増え、ゲームをしながら時々「飲む」という楽しみも増えます。
  今回は、「賭けない、飲まない、吸わない」という「健康麻雀」のルール(これに「徹夜しない」が入る場合もあるそうです)のうち、「賭けない」を低額の定額制とした以外は、小宴会で飲んだ後でゲームをしたので、一応「飲まない」はクリヤー、「吸わない」はもともと喫煙者はいないのでクリヤー、「徹夜しない」は全員がそんな元気はない年代なのでクリヤー、といった状況でした。ただ、雀卓の側にボトルとつまみを置いておき、チビチビやりながらゲームをしたらなお楽しかっただろうという話です。
  麻雀は運が左右するゲームではありますが、一定の勝つ技術というのもあるようで、既に電子書籍で「科学する麻雀」(とつげき東北著、講談社現代新書)、「秘伝東大式・麻雀基本のセオリー」(井出洋介著、実業之日本社)を購入、現在、丹念に読み込んでいます。このほか、インターネットでは、土田浩翔プロの「麻雀のすべて」という動画入りの極めて詳しい解説記事が無料で読め、現在、初心者向け編を見終わって、上級者向け編(!)を読んでいるところです。このプロは、「麻雀道」なるものも提唱し、麻雀をやる上での作法等についても触れていますが、最近載った、「場を平たく」という記事では、トップの一人勝ちがさらに進み、一人沈んでいる者がさらに沈むということのないよう、跳満を和了った人は満貫を振り込んで少し返すなど、「場が偏らないこと」を心掛けてもよいのではないか、というようなことを言っておられます。どうせ私はこれから頑張ってもそれほど強くなるわけではないので、むしろ最初から、そのような気持ちで行う麻雀を心掛けたいと思う次第です。