カラーリンス

  今年空前のヒットとなった、「アナと雪の女王」。そのテーマソング「Let it Go(ありのままで)」もまだ流行っているようです。先月会ったときにYちゃんは、意味が分かっているのかどうか、「レリゴー、レリゴー♪」と歌っていましたが、その「ありのままで」に背いて、おじいちゃんは最近、白髪を黒く染めました。というか、染めたつもりになっています。
  きっかけは、電車の中の広告で、簡単に染めることができるカラーリンスが発売されたことを知ったことです。還暦前頃から髪の毛がどんどん白くなり、一時は床屋さんに言われるままに「白髪ぼかし」というのをやったこともあったのですが、これは頭皮に合わなかったらしく、かぶれを起こして半年ほどで止めました。
  その後は、加齢とともに白髪になるのは仕方がない。禿げているよりはましだ。見てくれだけを気にして、不自然に自分を飾るのはみっともない。等々、人間の生き方として、それこそ「ありのままで」を信条として、テレビで私くらいの年齢の政治家の多くが黒々と染めているのを見ても、自分も染めようとは思わないことに努めてきました。
  ところが、7月の始め、旧友と久しぶりにオートバイツーリングに出かけ、東名高速の中井PAの2輪駐車場に停めてヘルメットを脱いだときに、先着の全然知らないグループの面々のビックリしたような視線がなぜか気になったのでした。近年、オートバイに乗るのは、4、50歳代の壮年層が中心なので、私のような年齢でしかも総白髪姿はやはり違和感が漂っているのではないか。彼らに余計な心配を掛けず、少しでも仲間意識を持ってもらうには、もう少し若づくりの方がよいと、なんとなく感じたのでした。
  そのときの、年齢を少し取り繕いたいという意識はその後もだんだん増幅し、本来、若々しさの正道とは、たくさん運動をして張りのある肌つやや、内面からのエネルギーを感じさせるものであることは分かっているのですが、努力を避けがちの私は、とりあえず白髪頭をなんとかすることだけに気持ちが傾いたのでした。ちょうどその時期に、前述のカラーリンスの発売が目に止まったというわけで、店頭でこの商品をよく調べたら、海藻エキス配合で肌に優しい等と書いてあるし、使用を重ねる毎に少しずつ黒くなっていくともあります。「白髪ぼかし」はいっぺんに真っ黒く染まりましたが、この商品は染まり方を自分でコントロールできそうです。
  というわけで、7月の終わり頃から使用を開始。風呂に入った際にシャンプー洗髪をしてタオルで水気をよく拭き取った後、この液体を頭髪全体に馴染ませるように塗ってから5分間ほど待って、後はお湯で洗い流すだけ。風呂から上がって髪を見ると、黒くなっています。ごく簡単です。
  妻には内緒で事を運んでいたのですが、目ざとい妻からは早速、「風呂場に黒いシミが付いている」とか「何それ?頭が紫色になっているわよ」とか言われる始末。ただ、妻以外には一切、職場をはじめ、旧友、子ども、孫等の誰からも、染めたことを話題にされることはありませんでした。これに気をよくしていましたが、8月始めに床屋に行ったとき、店主から「染めましたね」とすぐに言われました。さすが専門家です。
  そしてその店主から、1ヶ月後の先日、散髪に行った際に「先月はまだ紫色でしたが、だいぶん黒くなりましたね」との評価をもらい、とてもうれしかった半面、1ヶ月間はやはり紫色だったのかと、ややショックでした。いずれにしても、当分はこのカラーリンスを続けていくつもりです。孫たちのためにも、いつまでも若々しくありたいと願っていますので・・・。