断髪式

  琴欧洲関の「引退断髪披露大相撲」に行ってきました。両国駅から国技館まで、見たこともない大混雑の中、家まで迎えに行って電車で連れてきたYちゃんの手を引いてやっと国技館に入場し、東方の前から5列目のマス席に。滅多にないことだからと奮発して初めてマス席を買いました。続いて家から直行した妻と、Lちゃんの手を引いたLちゃんママのお母さんが前後して到着しました。久しぶりに会ったYちゃんとLちゃんは早速、大はしゃぎです。みんなが揃ったところで、断髪式に招待されていた私は、用意されていた土俵だまりの席に移りました。
  当日券も含めて全席完売という満員御礼の中、断髪式の前に相撲甚句十両土俵入り、初っ切り十両取組、髪結い実演がありましたが、コミカル相撲の初っ切りに大笑いし、十両土俵入りと取り組みの後にそれぞれ行われた「琴欧洲最後の土俵入り」と「最後の取組」には場内がほのぼのとした笑いに包まれました。というのは、琴欧洲関は息子と一緒に土俵入りし、息子と最後の一番を取って負けたのでした。髪結いのモデルは琴奨菊関でした。

  この後、土俵上に赤いマットがT字状に敷かれ、後援会長からの、琴欧洲の入門から引退までを振り返り返った挨拶があって、いよいよ断髪式となりました。断髪式の参加者は約350人。数が多いので、50音順に肩書と名前を呼ばれてから向こう正面、東方、西方と3方の上がり口に待機し、一人ずつ順番に土俵に上がります。介添え役の三役格の行司さんから金色の大きなハサミをもらって、琴欧洲関の大銀杏に結った後ろ髪の指示された箇所を少しだけ切り、琴欧洲関にそっと声を掛けてから土俵を降ります。
  自分の番の後にも延々とハサミ入れが続くので、席を外してマス席の家族のところに行き、孫2人と両おばあちゃんがお弁当や焼き鳥を食べ、お茶等を飲んで楽しそうにしているのを確認してから、また土俵だまりの席に戻りました。土俵上では、芸能界やマスコミ、スポーツ界、国会議員などの有名人が上がるたび、館内がざわめき、時には拍手や掛け声が起きます。一般招待者が終わると、次は奥さんのお父さんなど琴欧洲関の親族、稀勢の里白鵬など数人の現役力士、お世話になった先輩親方と続き、最後に佐渡ケ嶽親方が髷の根元を切り落として終了となりました。やはり感無量らしく、その後の琴欧洲関の挨拶はやや声が詰まっていました。
 琴欧洲親方のお父さん
  一連の進行を見ていて「やはりそうか」と思ったのは、土俵上は女人禁制で、ハサミを入れたのは全員が男性で女性は一人もいないこと。琴欧洲関の両親はブルガリアから来ておられたが、ハサミを入れたのはお父さんのみで、お母さんは断髪式終了後に土俵下で息子に花束を贈呈しただけでした。やや現代にそぐわない面もありますが、まあ、ここ一箇所くらいはそのような場所があるのも仕方ないかもしれません。
  男であれば赤ん坊でも土俵に上がれることになっており、この日は先述した琴欧洲関の坊やのほか、この後、横綱の綱締め実演後に行われた幕内力士の土俵入りでは二人、横綱土俵入りでは白鵬関が赤ちゃんを抱いて土俵に上がり、露払いの力士に赤ん坊を預けてから所作に入りました。地方巡業ではこのようなサービスを行っているようです。この後、櫓太鼓の打ち分け実演があってから幕内力士の全取り組みがありましたが、引退断髪披露大相撲は、このように本場所と地方巡業場所とのいいとこ取りをしたような、実に充実した見どころ十分なもので、孫にもしっかりと見せることが出来たのは良かったと思いました。
  全部終了後、私は家族と別れて送りのバスで芝公園プリンスホテルで行われる引退披露パーティへ。1千人を超える来場者の中、琴欧洲親方がオールバックのヘヤスタイルとスーツにネクタイ姿で登壇し、割れるような拍手に包まれました。セレモニー後の歓談の時間になり、念願のツーショット写真にも納まってもらい、帰路に着いたのでした。いただいた記念品の袋には、いつの間に執筆したのやら琴欧洲関の自伝本も入っており、とりあえず斜め読みをしました。

  19歳で来日し、22歳で大関となり、以来7年間、ケガを抱えながらも優勝一回を挟んで大関を張ってきた彼の頑張りと、その一方での優しく温かい人柄や礼儀正しさなどが改めてしのばれて、彼のファンであり続けてきて良かった、これからも、親方としての彼を応援していこうと思った次第です。