川柳

  先日お寺でお坊さんの法話を聴いていたら、「煩悩具足の凡夫である我々」の例として、「サラリーマン川柳で『粗大ゴミ 毎朝出しても 夜戻る』てなのがありますが、我々はみんなそんな凡夫なんです」というような説明に、思わず笑ってしまいました。いつの頃からか、世間では定年退職後の男性を粗大ゴミとか濡れ落ち葉とかと称していますが、この川柳はその言葉を上手く使ってなかなかに面白い。このお坊さんのように川柳を引用して話すのもまた面白いと感じて、これまではあまり関心がなかった川柳を少し勉強してみようと、第一生命主催のサラリーマン川柳コンクールの過去の入賞作品を見てみたら、面白いのが続々ありました。
  粗大ゴミの亭主の一方で、女房はどうしているかというと、『昼食は 妻がセレブで 俺セルフ』というのがあります。我が家では、まだ完全引退していない私は、出勤の時は愛妻弁当(愚妻弁当?)を持って出かけて、職場で一人で食べていますが、その時間、妻は大昔の「ママ友」やその他の友達と、「どこそこのシェフの料理が美味しい」などと、食べ歩きもしているようです。そういう女性陣については、『女子会と 聴いて覗けば 六十代』というのもありました。
  冬のこの時期に特に同感したのは、『このオレに あたたかいのは 便座だけ』という一句。人間誰でも孤独を感じるときはあるものです。『社の幹部 裏を返せば 社の患部』というのや『コストダウン さけぶあんたが コスト高』というのもあり、世のまだ現役のサラリーマンの心情に同情できます。
  『立ち上がり 目的忘れ また座る』というのは私も経験がありますが、我々の歳ならではの孫を素材にしたものとしては、『初孫に 肩をたたかれ 癒されて』や、『学芸会 孫が登場 もう涙』というのがありました。孫が素材の川柳なら私でも作れそうなので、少し勉強して応募してみようかなとも思いました。
 孫で思い出したのが、昨年11月のYちゃんの七五三祝いの時のときのことです。専門のスタッフに本格的に振り袖を着せてもらったYちゃんは、神社のお参りの前後にパパや私の注文でさまざまにポーズをとらされて写真に収まりました。特に境内での「見返り美人」のポーズの写真は、7歳にしては少しおませな感じがして、成長を実感したものです。

  で、神社の後は、料理屋で娘一家とパパのお母さん、それに我々夫婦で七五三の祝いの膳を囲んだのですが、その時、もう何時間も窮屈な着物を着ているYちゃんに「もう着替えようか」と声を掛けたところ、「まだ大丈夫」と言って、食事もきれいに食べました。そして、食後の余興にみんなで一句ずつ俳句を作ったときにYちゃんが詠んだのが次の句です。
  『七五三 着物はきついよ でも素敵』。「七五三」という初冬の季語が入っているので俳句とも言えますが、内容的には川柳のようなもの。昨夏に作った小説の中には「(運動会のダンスリーダーに選ばれて)興奮して眠れませんでした。でもすぐに寝ちゃいました」という表現があり、読んだ我々夫婦は「この感じ、分かる分かる」と笑ったものですが、今回の「着物はきついよ でも素敵」という表現も、何事も前向きにとらえるYちゃんらしい明るさがあります。
  ちなみに、その席で私の妻が作った俳句(川柳)が、『七五三 早く来い来い 成人式』というもの。女の子が着物を着る機会は、七五三を過ぎれば次は成人式の時になるので、その時が待ち遠しくなりますが、祖母としてのその気持ちがよく出ています。私の母が私の娘の成人式のお祝いに誂えて送ってくれた着物一式が我が家のタンスに眠っていますので、Yちゃんの成人式にはぜひこれを着てもらいたいもの。成人式のYちゃんの晴れ着姿、そして息子夫婦のところのLちゃんの晴れ着姿と、ぜひその頃まで元気に過ごしたいと、改めて意欲を持った次第です。