一億総活躍社会

  アベノミクスの政策の一つとして一億総活躍社会の実現が目標とされ、その関連として女性活躍推進法が4月から施行されるなど、女性の就労による活躍を推進する機運が高まっています。その影響も受けてか、結婚以来10年余、専業主婦を続けてきた娘が、昔のキャリアを生かしてまた働きたいと言いだし、夫も賛成して求職活動をしていましたが、このたび、ある大企業の子会社の正社員の内定を得ました。
  国家資格を生かした職なので、中途採用なのに最初から役職がつき、提示された年収額も良いようです。そして、5月からの出社に備えて、年中になるKくんについては家から3分くらいのところにできた認可保育園に、小3になるYちゃんについては通学する小学校に付設する学童クラブに、それぞれ入所申し込みを市役所にしたところ、どちらも認められて、既に4月から利用しているとのこと。保育所の待機児童の問題が深刻な中、娘の居住市は子育て支援サービスがとても進んでいると思いました。
  ということで、「良かった、良かった」と一緒に喜びたいところですが、よく考えてみると、都心にある会社まで通勤に1時間半近く要するため、朝7時頃から夜の7時過ぎ頃まで娘は家にいないことになります。保育園は朝7時から利用でき、延長を頼めば夜8時まで預かってくれ、学童クラブも夜の7時までは利用できるとのことですが、子ども達にとっては、今まではいつ家に帰ってもママが迎えてくれたのに、本格利用が始まる5月以降は、かなりの長時間、保育園や学校・学童クラブで過ごさなければならないことになります。
  まだまだ甘えん坊のKくんや、しっかりしているようでいてまだまだ子どものYちゃんが、果たしてこの環境の激変に対応できるのか、とても心配になってきました。情緒不安定になるのではないか、急な病気になった時にはどうするのか、Yちゃんは学童クラブからお稽古事に一人で出かけることになるが事故の危険性はないかなどです。夕食やお風呂、宿題、明日の準備、片付けなどはどうするのかも気になりました。ママが帰ってきてからそれらを行うと、就寝時間が遅くなります。
  社会的な保育や養育のシステムが整備され、それを利用できたとしても、母子の愛着やつながりを前提として考える限り、女性の就労には解決できない問題が横たわっていることになります。専業主婦で家事や育児に専念するのも立派な社会的な役割であると断言できる一方、少子高齢化と人口減少の日本において、女性の就労促進も重要な課題です。また、女性が生きがいを就労による社会参加に求めるならば、女性の生きがいや社会的な役割を家事や子育てに限定して押しつけて、それを許さないというわけにもいけません。
  子育てしながら働く母親は世の中にたくさんいるわけで、なにも娘の家だけが直面する問題でもないのですが、我が家は共働き世帯ではなかったので、私と妻には心配で不安なことだらけ。子育てと仕事を真に両立させる方法は、かなり難しく、奥の深い問題だということが分かりました。妻とも意見交換等をしたのですが、以下は、就労を決めた娘の気持ちを大切にしながら、かつ、孫二人に不憫や不便な思いをさせないための方策についての、私の基本的考えと対応案です。

基本的考え)女性の生き方としても、今後の日本社会のあり方としても、女性の就労は促進されなければならないということをまず押さえておく必要があると思います。その上で娘には、「子ども達が当面、辛い思いをすることは避けられないが、働くママの生き生きとした姿を見せる、経済的なゆとりをつくって海外の大学への進学等々、子ども達の将来の選択肢を広げるなど、中長期的には彼らにも必ず良い影響が多いことを確信して、働く以上はぶれずにしっかりと働くこと」を望みたいと思っています。

対応案)先述したような、保育園や学童クラブなどで子ども達が長時間過ごすことの問題を解決するためには、祖父母の協力が一番良いのではないかと思います。政府にもその考え方があるようで、平成28年度の政府予算を見ると、3世代同居を子育て支援のための有効な方策の一つと位置づけて、3世代同居住宅建築のための補助金や税制上の優遇措置が取られています。ただ、確かに同居や近居は有効だと思いますが、親世代にも子ども世代にもそれぞれ長く築き上げてきた生活があり、その拠点としての住居があるので、誰もが簡単に同居や近居ができるものではなく、我が家もまさにそうです。
  そこで私が考えたのが、私と妻とがローテーションを組んで平日のみ毎日交代で、午後5時頃までに娘一家の家に出向いてKくんの保育園からの引き取りと、孫二人の世話をし、娘が帰宅したらバトンタッチをして我が家に戻るということ。私も宿題や片付け、入浴の手伝いくらいはできますし、妻なら夕食の準備もできます。朝も、いつもは娘よりも後から出勤するパパが出張や早朝の会議があるときは、応援に行く必要があります。また、子どもが病気で学校や保育園を休まなければならないときは、終日応援に行ってあげる必要もあります。
  しかし、以上の対応案は我々夫婦にとってはかなりの負担です。老後はのんびり暮らそうと思っていたのが、そうも行かなくなりそうで、弱音も吐きたくなりますが、妻に言わせると、「しょっちゅう孫の顔を見られることになって、幸せだと思わなきゃ!」とのこと。確かにそうですし、一億総活躍社会での高齢者の貢献の一つだとも言えます。
  横浜の我が家から中央線沿線の娘一家の家までは2時間近くかかりますが、JRの定期券を買っておけば、横浜や渋谷、新宿などでの途中下車が楽しめます。同じ沿線上に息子一家の家があり、孫のLちゃんの世話は奥さんの実家のお母様がよく手伝ってくださっていて安心なのですが、必要なときには私たちも手伝えるようになります。
  というわけで、娘夫婦から正式な依頼があれば、5月の連休明け後くらいから、とりあえず半年か1年間くらい、Kくんが保育園に慣れ、長時間保育に心身とも適応する状況が見られるようになり、Yちゃんの身辺自立等が進むようになるまでは、平日の夕方を中心としたお手伝いを始めたいと思っています。もちろん、私たち自身に急用等ができて手伝えない日は、既にお願いをしてあるという、ファミリーサポートセンター等を利用してもらうこととなります。