養生訓

  雑誌読み放題のビューンで、ある月刊誌に養生訓が特集されていました。著者の貝原益軒は江戸時代の人ですが、その当時としては平均を倍以上も上廻る84歳の長寿を全うしています。
  私は以前から、ブームとなっては直ぐに消えていくような健康法に惑わされたり、TV等で宣伝されるサプリメントなどを一切口にしないことを信条としてきました。しかし、この養生訓は何も無かった時代の素の健康法であり、参考にしてもよいのではないかと思い、熟読した次第です。
  いろいろとたくさん書いてある中で、私が特に気に入ったのは、次の3箇所です。
第一) ひとり家に居て、閑(しずか)に日を送り、古書をよみ、古人の詩歌を吟じ、香をたき、古法帖を玩び、山水をのぞみ、月花をめで、草木を愛し、四時の好景を玩び、酒を微酔(びすい)にのみ、園菜を煮るも、皆是心を楽しましめ、気を養う助なり、貧賤の人も此楽(このたのしみ)つねに得やすし。
 前段に書いてあるような環境には我が家は全くないのですが、「酒を微酔にのみ」の箇所に大いに我が意を得ました。大酒はダメのようですが、飲むこと自体は推奨されている。酒の好きな私も安堵しました。その後の箇所「園菜を煮るも」というのは自家製の野菜を煮て食べるのも良しということですが、我が家では今年もゴーヤや茄子などを庭の狭い畑にたくさん植えましたので、それもできます。まさに最後段、「貧賤の人もこの楽しみを常に得やすし」です。

第二) よく生を養う人は、つとにおき夜半にいねて、昼いねず、常にわざをつとめておこたらず、ねぶりふす事をすくなくして、神気をいさぎよくするなり。
  要するに、元気な人は、昼寝などしないで昼間はしっかりと働き、夜だけ寝ている。睡眠は短めのほうが気力がわく、ということのようです。
  私は、ここ数年夜に熟睡できず、朝も早く眼が覚めて困っていましたが、益軒先生に言わせれば昼間の過ごし方に問題があったのかもしれません。養生訓のこの言葉を知って以降、休みの日の昼間にウトウトするようなことを絶対にしないように気を張って過ごしていたら、熟睡できる夜が増えたような気がします。
第三) 心を和(やわらか)にし、気を平らかにすべし。
  健康のための心の持ち方を説いたこの言葉が、一番気に入っています。益軒先生の時代よりも、おそらく現在のほうがストレスが多い時代。それを乗り越えるには、結局この言葉のような心の持ちように改めるのが一番だと確信しています。実は、益軒先生のこの言葉に出会う数年前から、私の生き方として、このような心の持ち方に努めてきました。
  それまでは些細なことでイライラカリカリすることが時々あったのですが、そのような状態の時の自分がとても小人物に思えて、さらに気持ちが落ち込んでしまうという塩梅でした。そこで、何事があっても絶対にイライラカリカリしない、気持ちをプレインに、フラットにと言い聞かせ、一呼吸も二呼吸もおいたり、ものの見方を例えば相手の立場から考えてみたり、大した問題ではないと割り切ってみたりと努めているうちに、一日気持ちよく過ごせる日々が多くなりました。
  単なる加齢による変化ではないかとも言われそうですが、歳をとると逆に癇癪じじいになる人も多いので、私の場合は自己流ストレス対応がうまくいった例だと自賛しています。あるいは、3人の孫の存在が大きかったのかもしれません。人を疑うことを知らず、純粋で和かな子ども達と接していて、私も自然と童心に返ったようです。養生訓のこの言葉は、ここ数年の私の努力にお墨付きをくれた気がします。