無電柱化

  小池百合子都知事の就任後最初の定例記者会見記事を読んでいて、うれしくなったことがあります。それは、ある記者が「東京の無電柱化」をどう進めるかについて質問をしたのに対し、豊富な知識を元に我が国や東京で無電柱化が進まない理由や無電柱化のメリットについて詳しく説明した上で、ぜひ意欲を持って無電柱化を進めていきたいと、抱負を述べていたことです。全く知りませんでしたが、小池知事には「無電柱革命」という著書もあるとか。選挙権がないので都知事選各候補の公約までは読んでいませんでしたが、無電柱化も公約になっていたのかもしれません。
  以下、知事の話の要点としては、無電柱化が進まないのは、①電柱が張り巡らされた光景があまりにも日常になっているために、国民や都民の意識が電柱に向かっておらず、何もそれで困らないという意識にもなっていること、②無電柱化にする場合のコストが高いこと。電柱で済ませる場合の10倍から22倍にもなっており、かつ、競争の働かない世界なので、価格を下げるためのイノベーションも行われてこなかったこと、などがあるようです。
  しかし知事は、①電柱を無くすことによって自転車やベビーカー、シニアカーなどが通りやすくなるなどの生活上の利便性、電柱がないことによる美しい景観の観点、そしてそれより何よりも重要な、震災時等に電柱が倒れることによって緊急物資輸送路が塞がれるなどの防災上の問題などからも、国民の意識を変えることが大切と言います。そして、②コストの問題も、国土交通省など関連省庁の近年の実験の結果では、地下埋設には従来80センチの深さが必要だったのが25センチでよくなり、かつ、従来離す必要があるとされていた電線と通信線も一緒にして管を通せばよくなったことなどから、かなりコスト削減ができるようになったそうです。
 
横浜市内で。細い歩道に電柱が立って、通行もままならない
  前々回のブログで、アレックス・カーさんの「日本景観論」を紹介する中で無電柱化の必要性に私も触れましたが、その後、少し調べたら、日本の「無電柱化率」は誠に情けない限りとなっています。ロンドンやパリは早くから100%は分かるとしても、アジアでも香港100%、台北95%、ソウル46%に対し、東京23区は7%、横浜市3%、全国の府県の大半は1%という低さです。
  小池知事のリーダーシップで、2020年の東京オリンピックパラリンピックまでにせめてソウル並みの50%程度まで東京23区の無電柱化率を高められないか。待機児童問題や要介護高齢者問題、「東京国際金融センター」構想等々、東京都の政策課題は山積していますが、それらと併せ、東京の無電柱化に積極的に取り組んで成果を挙げれば、大震災後の東京復興を成し遂げた後藤新平東京市長のように、都市計画等の面でも後世に名を残す名知事になれます。