清澄な日々

  飲酒歴が半世紀を超え、飲酒を人生の大きな楽しみの一つとしてきた私ですが、この夏、世間に公言できる程度の酒断ちを行い、それに成功しました。
  酒なら何でもござれ。特に真冬の熱燗と真夏の焼酎水割り、春秋やちょっと気取ったときのワインなど、あまり量を飲めないビール以外は、なんらかのアルコールを飲まないとすまない毎日でした。しかも、親譲りで体質的にアルコールに強いのか、どんなに飲んでも翌日はすっきりしているし、毎年の健康診断でも特に指摘されたことはない、妻もあきらめて文句を言わない、ということで特に外圧があったわけではないのですが、それでも、もうそろそろ酒は止めようと思ったのでした。
  最大の理由は、やはり人生の残り時間を意識するようになってきたからだと思います。日中は目いっぱい活動しているけれど、ここ数年、夕食時に飲んだ後に酔いを感じる時間が早くなってきた。そのために夜の時間が使い物にならなくなり、何もしないで早めに寝てしまうことが多くなりました。その睡眠も、運動の疲れから自然に眠りにつくという類のものでなく、酩酊して昏睡するため、深夜に覚醒してその後の眠りが浅い、といったものでした。
  これではいけない。読書、創作、英語、囲碁、将棋、ギター、ダンベル体操、等々、やりたいことはいっぱいあるのに、貴重な夜の2,3時間を無にしてよいのか、やりたいことをやるための時間を取り戻したいと、切に考えるようになった次第です。質のよい睡眠を取り戻したいとも考えました。
  とはいえ、酒は最大のコミュニケーションツールです。特に私のようなやや無口な者は、少しアルコールが入った方が人付き合いも良くなる。ということで、私が決めた今後の人生における飲酒のルールは、「付き合い酒以外の飲酒は止める」ということ。つまり、職場や友人等との飲み会では飲むが、家での晩酌は一切止める、ということでした。
  8月に入って直ぐからこれを実行に移しましたが、正直、最初はあまり自信はありませんでした。しかし、ダメ元と気負わずに淡々とした気持ちでチャレンジしたのが良かったのと、飲んだ気分に近づけるよう、ノンアルコール飲料で代替した作戦が功を奏し、1週間が2週間に、そしてついに今日まで1ヶ月以上も家での飲酒はストップしています。
  一方、旧盆明けに開かれた昔の職場仲間との飲み会では、「付き合い酒は飲む」とのルール通りに普通に付き合い、焼酎のオンザロックを何回もお代わりするなど、健在ぶりを示すことができました。
  体調の変化ですが、最初の1週間ほどは、全然飲んでいないのに、夜の一定の時間になると飲んでいた頃と同じように頭がぼんやりしてくるという状態が続きました。しかし、これはどうやら、長年の飲酒の習慣で体内時計がこのように出来上がってしまっていたことによるようで、その期間を過ぎた頃からは、期待通りに頭脳明晰?となり、夜は11時を過ぎる頃まで読書等をして過ごし、満足感を持って就床しています。やや涼しくなってきたこととも関係するのでしょうが、熟睡できる夜も増えたような気がします。
  おそらくこのまま、家での断酒は成功するように思うのですが、懸念は季節が寒くなってきた頃の熱燗の誘惑です。今回知ったのですが、今の世の中、ノンアルコール飲料がたくさんの種類、販売されています。特に私はノンアルコール缶酎ハイに助けられ、これを冷やして飲めばまあまあ焼酎の水割りを飲まなくても済んでいますが、ノンアルコール清酒というのはまだ無いようですから、熱燗に代替できる飲料をどう確保するか、今から心配です。

  ただ、代替がないときには、「付き合い酒は可」という自己ルールを大いに活用し、現在概ね月に1回の、元職場の先輩で同じ地元のMさんやIさん(二人とも夏でも熱燗の、熱燗党)との地元寿司屋での飲み会を、頻度を増やしてしのぎたいと思っています。
酒(厳密には晩酌)を断ってもたらされた、人生晩年の清澄なる夜の時間。自分を深め、社会貢献にもつながる時間となるよう、大切に使いたいと思います(!?)