旧交③ 「山菜採り」

  学生時代に同じ下宿の隣の部屋にいた友人が5年振りくらいに東北から上京し、連絡をくれたので、早速会おうということになり、横浜駅の地下街で昼間から飲みながら旧交を温めました。
 彼は出身が東北で、都内の民間企業に就職。結婚してしばらくは首都圏にいたのですが、実家の近くに戻って好きなスキーなどに打ち込みたいと、40代半ば頃に退職して東北某県の県庁所在市に移ってしまいました。サラリーマン時代に蓄えたお金で市内に少しずつ4棟80室もの学生向けアパートを建て、その家賃収入で早い時期から悠々暮らしています。
  東北3大祭のときにこちらの友人と3人で私の車に乗って訪れたこともあるのですが、さすが東北、自宅も立派で広々とし、自分用にベンツのSクラス、奥さん用に国産車などを乗り回している贅沢さに感心したものです。
  しかしながら、久しぶりに会って彼の近況を聞いて改めて羨ましくなったのは、そのような私には相応しくない贅沢さではなく、東北の大自然と一体となった生活の楽しみようです。
 シーズンの冬には北海道や地元のスキー場でスキー三昧し、他のシーズンにはゴルフ、テニス、山登り、カーリングなどに打ち込んでいるとか。山登りのために体重を増やさないように気をつけているということで、身体も引き締まっていました。
  そして彼が今回熱を込めて語ってくれたのが、山菜採りの楽しさです。自宅から車で15分も行けば着くようなところも含め、あちこちの山で山菜が豊富に採れるそうで、5月の連休頃から始まるシーズン中は何度も出かけ、その都度背負っていったリュックをいっぱいにしてくるとのこと。

  私はかつて何度か、5月の連休に仲間とともにオートバイツーリングで訪ねましたが、その頃の東北の山々の美しさは格別で、「神々の山を駈ける」という表現をしたこともあります。秋の紅葉の頃ももちろん素晴らしい。
  そのような山々を登山で楽しみ、山菜採りで楽しむ生活。今回のお土産に、彼の奥さんが綿毛を取り灰汁抜きをして天日干しをしてくれたゼンマイを沢山いただきました。これを水で戻してうちの奥さんに料理してもらって、その幸せのお裾分けにあずかりたいと思っています。